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「何よ、何なのよ……っ、ハッターの、馬鹿」
アリスは涙をぐずぐずと零しながら座り込んだ。柔らかな草の上に座り込む。制服のミニスカートが皺になるのも構わずに、膝を抱えて俯いた。
(『この世界のニンゲンでもない癖に』、か)
その通りだ、アリスは本来
ここに、アリスのいる場所なんてないのだ。
(はは、馬鹿だなあ、あたし。居心地悪いのなんて、いつもの事じゃない)
教室の中、いつも静かに暇を持て余して過ごしていた。バスケットボールを追いかけているときだけは1人でも息が詰まらなかったけれど、ゲームが終われば1人で休息をとり、黙々とシュートを決めた。家に帰れば姉はまだ帰っていなくて、2人分よそった夕飯はいつも、アリスの分だけ温めて食べた。何もかも、静かな日常。アリスの周りはいつも静かで、その静けさはひどく居心地が悪くて。
だから、本当はこの世界で、与えられた『力』に少し期待した。ゲームのキャラクターみたいに、成すべき役割があるんじゃないかと舞い上がった。
(でも……そんなの、ただの夢だ)
いっそ悪夢だわ、とアリスは思った。
ありもしない可能性でも、一度それに思い至ってしまえば、期待せずにはいられない。アリスにとって、この力はもはや悪夢だ。叶わない期待を見せられて、目をそらしてしまいたいのに、選ばれてしまったのだからそれすらも出来ない。何も知らず、自分を助けてくれたハッターからも逃げてしまった。八方塞がりだ。アリスの目にまたもじわりと涙が浮かんだ。寂しい、虚しい、苦しい。たった一人で、あたし、一体どうしたらいいの――。
「おや。あなたは――」
「……え?」
不意に声がかけられ、アリスは思わず顔を上げた。
「こんなところでお会いするとは……まさに奇遇、と言うべきでしょうね」
「……あなた、は」
そこに居たのは、新雪のように穏やかな純白をまとったひとだった。
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ユエル(プロフ) - クルルさん» コメありがとうございます!不定期更新ですが頑張りますね(^^) (2021年1月11日 13時) (レス) id: 673d6f73a6 (このIDを非表示/違反報告)
クルル(プロフ) - めちゃくちゃ面白い!!!!サイコーです!!続き待ってます!! (2021年1月3日 23時) (レス) id: 297c8a2c3d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユエル×日向なつ x他1人 | 作者ホームページ:
作成日時:2017年5月21日 1時