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「……と、それがこの国にまつわる伝説だ。最初に選ばれた《白の
「それで、白いお姫様だったのね」
「ああ。それから……アリスがあの時使った力、あれもおそらくは、《
「へ!?」
思わぬ方向から自分に話が飛んできて、つい素っ頓狂な声を上げてしまう。ハッターは苦笑し、アリスの胸元あたりを指差した。
「それ、そのブローチだ。チェスの駒だろう?」
「え? あたしはブローチなんて……え!?」
付けてないわよ、そう言おうとして胸元に視線をやり、アリスは目を見開く。白と銀で形作られ、天辺に十字を掲げた駒。チェスの経験がないアリスにはそれがどの駒かは判断がつかないものの、紛れもなくチェスに使われる駒であることは明白だった。
「嘘……いつの間に……?」
「それはアリス、君のほうが分かるんじゃないか? あの時使った力は、昔から持っていたものではないだろう」
「あの時……」
あの時、時間が止まった世界の中で、アリスは少女と向き合った。
「……女の子に、会ったわ。髪を二つ結びにして、青いキノコの上に座ってた。『力を与える者』って……そう、それであたしは、あの子に望んだの」
『――望むわ。その、力とやらを』
あのとき、そう言ったのは自分だ。アリスはそのことを思い出し、納得したように顔を上げた。
「分かった、あの時言ってた『力』ってのが《
実は疑問に思っていたのだ。何の理解も疑問もなく行使した自らの力、あれは明らかに強すぎた。ハッターの攻撃は素人目にもそれなりの威力があるとわかるほどで、それに耐えたトランプたちを瞬時に撒けるほどの威力を持っていたのだから。
「そっか、じゃああたし、今は『王様』なんだ」
実感ないなー、何すればいいのかしら。ハッター知ってる? あっけらかんとそんなことを思考するアリスは、向き合う美丈夫を見やって目を見開く。
俯いた顔。鮮やかな髪色とシルクハットがそれを隠し、目元は窺い知ることさえできない。固く引き結ばれた薄い唇が色をなくし、そこから地を這うような低い囁きが漏れる。
「……何、を」
「は、……ハッター?」
「何を、考えてる」
「え……?」
「勝手に、何つー、ワケ分かんねえモンに、手ェ、出しやがった」
その声が、酷く耳に突き刺さった。
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ユエル(プロフ) - クルルさん» コメありがとうございます!不定期更新ですが頑張りますね(^^) (2021年1月11日 13時) (レス) id: 673d6f73a6 (このIDを非表示/違反報告)
クルル(プロフ) - めちゃくちゃ面白い!!!!サイコーです!!続き待ってます!! (2021年1月3日 23時) (レス) id: 297c8a2c3d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユエル×日向なつ x他1人 | 作者ホームページ:
作成日時:2017年5月21日 1時