親愛なるあなたへ。 (ページ29)

今日:17 hit、昨日:14 hit、合計:61,378 hit

28.　上手くいかないページ29

結城 side

手元に光るスマートフォンの画面には、様々な言葉が羅列さてれいた。
その8割が批判的な内容であることを気にもとめずに、ただひたすらに画面をスクロールする。

『結果論だもんね、結局。』

そんな呟きは、直ぐに空気と同化して消えていく。

球界も、芸能界も。結果が全てなのだ。

どちらの世界も結果が出なければ批判していいという間違った惰性で染まっていることを、私は誰よりも知っている。

第三者が求める結果なんて、勝手な期待に過ぎないのだ。

勝利も欲望も期待も。
一方的に向けられて、その分捨てられ、裏切られたと言われてきた。

過度な期待によるプレッシャーも

いつの日か言えなくなった本音も。

痛いほど分かるから、苦しくなってしまうんだ。

薄暗いホテルのロビーには明るすぎるスマートフォンの画面には、相変わらず罵詈雑言の羅列が浮かんでいた。

やけに映える青いハッシュタグには、私の名前と、もう1人。
背番号55の彼の名前が刻まれている。

お互いの努力など認められることもなく、積み上がっていくのは懐疑の念だけ。

いつ結果が出るか分からない、認められるか分からない。
認められる日など来ないかもしれない。
まるで、出口のない長すぎる暗闇のトンネルにいるみたい。

『........うまくいかないね。』

そんなたった一つの本音と、不振に苦しむ神様の足音が聞こえたのは同時だった。

　