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26. 夢を追う ページ27






 





____自分の夢と、大切な人の夢。

その2つを天秤にかけた時
どちらを取りますか?







即答するには難しい質問だと思った。

今の自分は、おそらく前者を選ぶだろう。

だけれどいざ大切な人ができた時、自分の夢を突き通せる自信はない。



即答できなかったのは、

この質問の意図をわかってしまったのもあるだろう。


それでいて、彼女自身が後者を選んだのも知っていたから。








『男たらし、裏切り者....。脱退を発表したとき、そんな心無い言葉が飛んできました。』

『でも裏切り者なのは間違ってないから...何も言えません。』







「なんで......引退するんですか?」


そう口にしたとき、浅はかな質問だったかもしれないと少し焦った。
けれど彼女は、そんなこと気にもとめずに笑っていた。








『今シーズンのオフ。...そうじゃなくても近い将来.....』









______彼はきっと、アメリカにいくと思うんです。








『凄く幸せそうで、希望を抱いてる顔してるんですよ。
大谷選手とか、吉田選手と話してる時。』


『気づきたくなくても、メジャーに行きたいんだろうなって分かっちゃいます、笑』




.....そんな大切な人のこと、放っておける訳ないでしょ?


そう言った彼女は、少し寂しそうな顔をしていた。





『大好きなんですよ。彼も、グループも。』

『だからこそ、凄く難しい選択だったんです。どちらも命と同じくらい大切だから。』






大切な人の夢を応援すること。

それはすなわち

自分の夢を諦めること。






『このWBCの仕事引き受ければ、自分のアイドル人生の最後を、大切なメンバーと過ごせないことは分かってた。』

『ファンも、関係者も、メンバーも。....全員を蔑ろにしてしまうことだって、全部わかってた。』


『分かっててこの仕事引き受けたんです。』












『....................最低でしょ、笑』







自分自身を嘲笑うような笑みを浮かべながら、彼女は首元のネックレスに手を当てた。

どちらも同等に大切だからこそ、起こってしまった悲劇。














___夢を追うには、何かを諦めることも必要ですよね。









俺が青春を諦めて、その時間を野球に費やしたように。


彼女は由伸の夢を追うために、自分の夢を諦めた。








─────⋯⋯⋯それだけだ。

 

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作者名:京香 | 作成日時:2023年7月20日 19時

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