親愛なるあなたへ。 (ページ26)

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25. This is me ページ26

16 side

なんとなくドーム内を歩いていたら

綺麗な英語の発音と共に、美しい歌声が舞い込んできた。

＿＿＿＿＿＿＿＿結城Aさんだ。

アイドルグループの紅一点。
そして由伸の彼女さん。

繊細に、だけど力強く歌っている姿をみて、ふといつの日か由伸が口にした言葉を思い出した。

“＿＿＿あいつ、WBCはじまったころから、誹謗中傷が酷くなってるみたいで。”

人には慣れというものが存在する。
それがいい方に転ぶ時もあるが、悪い方へ向かってしまう時もある。

それに、必ずしも慣れが機能するとは限らない。

おそらく、これまでにもたくさんの批判や暴言を身に受けてきた彼女も、言葉の暴力には慣れが機能しないのだろう。

『When the sharpest words wanna cut me down』

＿＿＿＿＿鋭い言葉が私を切り裂こうとしても

『I'm gonna send a flood, gonna drown them out』

＿＿＿＿＿洪水を起こして、溺れさせてやる

『I am brave, I am bruised』

＿＿＿＿＿私は勇敢で、傷つけられた人

『I am who I'm meant to be』

＿＿＿＿＿それが私のあるべき姿

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿This is me

それはまるで、自分自身に向けて歌っているように聞こえた。

『いい曲ですよね。』

16「.......気づいてたんですね。」

『勘が良すぎるもので笑』

なんとなく、由伸が好きになった理由がわかる気がする。

この特徴的な笑顔に、多くの人が魅了されたんだろう。

それと同時に、左脚にある傷がちらりと見えた。

『...気になりますよね。』

16 「......まあ、はい。」

『ファンの方に刺されたんです。待ち伏せされて切りつけられました。』

『傷がかなり深かったみたいで。神経傷ついて、麻痺しちゃって、少し動きづらいんです。特に冬は寒いから。』

『このこと、誰にも言ってないので秘密にしといてください笑』

16 「分かりました、笑」

この人は、思っている以上に強くて弱い。そう思った。

『そうだ。.....一つだけ質問しても良いですか？』

16 「？、はい」

そう話し始めた彼女は、今にも壊れてしまいそうなくらい、小さかった。

『大谷選手は、』

16 「、？」

＿＿＿自分の夢と、大切な人の夢。