検索窓
今日:11 hit、昨日:14 hit、合計:61,372 hit

16. 強くなんてない ページ16





18 side




朗希から

Aに励ましてもらったという話を聞いて

強いな、と思った。


自分自身、大切な人を亡くして

きっと今日も辛いはずなのに

同じ境遇の朗希を励ましていて

ほんとにあいつは強い。

______________そう思っていた。










ダグアウト裏の通路。

滅多に人が来ない場所。

そこにあいつは、Aはいた。











18 「_________A、?」

『っあ、由伸、。ごめん、邪魔やったね』

18 「いや、全然ええよ。」








『..................怖いんよ、』





そう言ったAの手は、微かに震えていた。






『なんも出来んかった、助けもせんかった。......見つめることしかできんかった。』

『今でも夢に出てくるんよ、あの光景が。』






毎年、3月に差し掛かってくると

Aはよく魘される。

12年間、あの日の恐怖を1人で抱え込んできた。


 





『お母さん見殺しにしたやつが、テレビに出てええんやろか』



 



また、一段と大きく手が震えた。









18 「それとこれは関係ないで。大丈夫。」




 
大丈夫、としか言えない自分に

無性に腹が立つ。





『......うん。』

『なあ、由伸。』



___________ちょっとだけ、抱きしめて?







僕より何倍も小さな震える体を

そっと、優しく抱きしめる。


この小さな体に

不安も、期待も、後悔も、なにもかも

全部一人で背負っているんだ。



それを悟られないようにと、

いつもAは

無意識のうちに

アイドルの、笑顔の結城Aを演じている。





『............よし、もう大丈夫。』



ありがと、って

いつもの笑顔を見せて

駆けていったA。

僕もダグアウトに戻った。
















スタッフ「スタジオと繋ぎます!」

  「本番5秒前!4、3、2______」









『今日も東京ドームは満席。試合開始前ですが熱気と歓声に包まれています!』


『______あの日から、12年。風化させないために、私たちに何ができるのか。』


『多くの人が、前を向いて進もうとしています。それを、野球を通して感じて欲しい。マウンドに立てることに感謝したい。先発の佐々木選手は、そう語ります。』


『野球を通して、今日という日が少しでもいい日になれば、そう思います。』









やっぱり。

____________Aは、強い。

17. LINE NEWS→←15. あの日の記憶は。



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (99 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
536人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:京香 | 作成日時:2023年7月20日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。