15. あの日の記憶は。 ページ15
※このお話は、東日本大震災の内容を含みます。そこまで過激ではありませんが苦手な方はブラウザバックを推奨します。
結城 side
チェコ戦が始まろうとしていた。
ある人が選手の輪の中に居ないことに気づいて
バックヤードの方へ向かう。
そこは、ドームの中で唯一
空が見える場所。
バックヤードに向かう階段には
今日という日に一段と思いを持つ彼が
そこにいた。
『忘れられないですよね。』
『忘れちゃいけないからこそ、頭にこびりついて離れないんだと思います。』
『私も、母と親戚と.....親友を亡くしてるんです。』
そっと、階段に座り込んでいる彼の隣に行く。
いつの間にか
メンバーの誰にも言っていないことを口にしていた。
14 「え......」
『なにも、出来なかったんです。』
『私を庇って、目の前で津波に流されていく母の姿を、私は見つめることしかできませんでした。』
『なんであの時なにもできなかったんだろうって、今でも思うんです。』
実際に経験した人しかわからない辛さ。
大切な人を亡くした辛さ。
『もう前を向かなきゃって。』
14 「......!」
『そう思ってはいるんですけど......だめですね。私はまだ、前を向けないままです。』
『あの日から、東北に行けなくなってて。また、震災が起こったらどうしようって......弱いままです、。』
少しでも助けになれば、と
私は言葉を紡ぐ。
『前を向こうとしてる佐々木選手は、強いと思います。』
今、同じような境遇にいる私が彼に出来ること。
それはきっと、声をかけることしかないんだと思う。
『佐々木選手。』
『佐々木選手のピッチングで救われる方は必ずいます。』
『だから、いつも通りで大丈夫です。』
『お父様と、お祖父様、お祖母様に届けるピッチングをしてください!』
14 「.....はい!」
2人でなんとなく、東の空に目をやった。
ここから見える空は、東北にも繋がっている。
今は亡き大切な人に、思いを馳せて_______。
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作者名:京香 | 作成日時:2023年7月20日 19時