WASABI ３

６ ページ47

なぜか、
日曜に帰省した実家には、
叔母や従姉妹たちまで集まってて。


みんなで忠義を囲んで、
すっごく盛り上がってる。


「俳優さん？モデルさん？」


「ええっ？
そのルックスでサラリーマン？」


「Aちゃんて、面食いなのね」


忠義も女性陣たちに囲まれて、
満更でもなさそうというか。


なんならちょっと楽しそう。



夕飯食べ終わったら、
従姉妹たちは帰っくれたけど、
そこからは、

忠義とお母さんとで、
また盛り上がってる。


結婚前に同棲なんてって怒るとばかり思ってたのにな。


居場所をなくしたお父さんは、
縁側で、
ぽつんと一人、爪を切ってる。

なんで今、爪を切る必要があるのか分かんないんだけど。


「お父さん、
あっちで喋んないの？」


一応、声かけたけど、


「うん、まあな」


ぼそぼそ言うだけ。


忠義のこと、気に入らない？

・・・困った。


忠義も気になるみたいで、
お母さんの相手しつつも、
ちらちらこっちに視線を送って来る。


「Aは結婚なんかしないと思ってたのになあ。
男みたいにバリバリ働くのかと」


お父さんが、しんみり言うから。


「私に結婚して欲しくないの？」


びっくりして、ちょっと声がおっきくなってしまった。


「いや、そうじゃないけど・・・
うん。
結婚はしてほしいけど。
思ったより早かったって言うか。
いや、２８はとりたてて早くないか。
彼が大手企業のサラリーマンでとりあえずは安心した」


「なんで？」


「うちは自営で、
お母さんには、
苦労かけたから。
和真にもAにも、
寂しい思いさせてきたし。
出来たら、
普通のサラリーマンの人と、
結婚して欲しかったから」


お父さん、そんなことを考えてたんだな。


だから、
お兄ちゃんにも会社継がせないで、
就職させたんだ。

７→←５

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す