WASABI ３

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「・・・痛いよ、放して」


ちっちゃい抵抗するので精一杯。


「どっちが、・・・し、やねん」


その呟きは掠れてて、
最初、はっきりとは聞き取れなかった。



苦しそうに顔を歪めて、
大倉が目を伏せる。


どっちが、彼氏、やねん、

そう、言ったんだ・・・


私が一番大切な人を傷付けてる、


「ごめんね。
本当に何にもないから。
さっき初めて連絡あって・・・
信じて。
ね、おおく、」


はっとした時には遅くて。


「やから、ちゃんと呼べ言うてるやろ」


大倉が吐き捨てるように言った。


嫌われたかもしれない。


もし反対の立場だったら・・・


大倉が私の友達と前に付き合ってたら、
嫉妬して苦しくて、
乗り越えられないかもしれない。


分かるから。


「た、だよし・・・」


名前を呼んだら、
涙がこぼれ落ちた。


大倉が目を見開いて、息を飲む。


「ごめん。
なんも一生、亮ちゃんに会うな、とか、
一切連絡すんなとか、言うつもりないねん。
二人が友達でおってもええって思ってたはずやのに」


「・・・忠義が嫌なら、
もう亮には連絡しない。
失くしたくないの。
ずっと一緒にいたい。
忠義が好き。
好きなの。
だから私の前から消えないで。
お願い・・・」


「・・・A？」


「いなくなったら嫌・・・
嫌いにならないで。
離さないで」


気付いたら、大倉、
・・・忠義の胸に飛び込んで、
しがみついてた。


こんな取り乱すとこ見せちゃうなんて。


どこかで冷静な自分が、
今の自分を見て、
恥ずかしいのに、
止められない。


「離すわけないやろ。
こんな妬いてんのに・・・」

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