WASABI

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カレー食べ終わった後。

Aが、
カバンの中から、
ちっこいキラキラ光るものを取り出して、
俺に差し出した。


女物のピアス、片方。


「お前、持って来たん？」


「だって・・・
つい。
亮は多分、気付いてないし・・・」


「それ。俺が預かる。
佐和ちゃんにこそっと返しとくわ」


自分でも何言い出してんねんて、
思ったけど・・・

後には引かれへん。


「それもどうかなあ。
これって、私への宣戦布告でしょ？」


「お前、でも持ってんの嫌やろ？」


「うんまあ。
この偽物のちゃっちいガラスの花を粉々に打ち砕いてやりたくなる」


「さすがにイミテーションしかもったいなくて、
落とされへんかったんちゃう？」


そう言うたら、Aがぶって吹き出した。


「覚悟が決まってない女だな。
私なら本物のダイヤのイヤリング、
しのばせてやる」


「せや。
Aのが断然ええ女やで」


思わず口をついて出た本音に、
Aが驚いた顔したから、
しまった思ったけど・・・


「今頃気付いたの？」


何でもないように笑われただけ。


「お前、ちょっと褒めたからって調子に乗んなよ」


あかんて。


結局、いつも通りの俺らや。







会社に戻って、
喫煙室におる亮ちゃんに、
何も言わずに、
ピアスを突き出したけど、

ほんま、心底不思議そうにされただけ。


「何これ？
針、こっち向けんなや。
怖いやんけ」


あんまりのとぼけっぷりに、
がっくりくる。


「これ、誰のか分かって言うてんの？
亮ちゃん、Aに隠し事してるやろ」


何とか押し殺してた 気持ち、もう隠せそうにない。

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