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このまま、
店を後にしようか。


声をかけるのはためらう。


3年も音沙汰なしで、
あいつにとって、私は、その程度の相手。



ああでも。


こんな偶然はこの先、二度とやって来ない気がしてる。


迷って立ちすくむ私を、
大倉が振り返った。


「Aやん、久しぶりやな。
来たところやのに帰んの?」


昔と変わらない、
少し間延びした優しい声。


いつどこで再会してもいいように、
身だしなみにだけは気を使ってるつもりだけど・・・


今、あいつの目には、
私はどんな風に映ってるんだろう。


大学時代の私はお世辞にもお洒落とは言えなくて、
大倉に、いつも女子力皆無って笑われてたな。


あいつにはいつも私とは真逆なタイプの彼女がいたのに、
卒業式のあの夜、どうしてあんな無謀な事が出来たんだろう。


追い詰められた人間というものは何をするか分からないものだ。



本当はずっと会いたかった。


こんな偶然が来ることを願ってた。


だから会社のある沿線とは違うのに、
この店に通い続けてたんだ。


「どうしてん。
まさか、俺のこと、忘れた?」


大倉はスツールから半分、立ち上がりかけてて。


私を見て、昔のように、
屈託なく笑った。


時間が巻き戻る・・・


恋心が蘇って、
動揺して。


慌てて何か言わなきゃ、って・・・


「大倉じゃん。
久しぶりだね。
こんなとこでどうしたの?
大阪に帰ったんじゃなかったの?」


なんとか声は震えてなかったかな。



「春にこっちに転勤なって。
舞い戻って来てん」



春ってことはすでに3ケ月も経過してる。


大倉にとって、私は、
近くに戻って来てても、
連絡もしないでいいような、
もはや、記憶にも浮かばないようなそんな存在。


「そうなんだ。
全然、変わらないね。
昔のまんま」


「嘘やん。
3年も経ってんねんで。
ちょっとはええ男になったはずやのに。
お前は・・・」


そこで不意に黙りこんで。

私をじっと見るから。


心臓がバカみたいに早く打ち始める。



綺麗になった、って、
そんな言葉、期待してたのかもしれない。


だけど、あいつは、


「お前も変わらんな。
時間、止まってたみたいに」


そう続けた。

3→←再会。1



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yume.no.(プロフ) - 更新ありがとうございます!もうすでに切ないですねー( ; ; )両方楽しみにしてますね♪ (2018年5月21日 17時) (レス) id: 716f977705 (このIDを非表示/違反報告)
マッキー(プロフ) - おお!両方めちゃ嬉しいです!楽しみにしていまーす! (2018年5月21日 13時) (レス) id: 91ea55fdc2 (このIDを非表示/違反報告)
にゃー(プロフ) - うわぁ!本当に両方書いて頂けるなんて、嬉しいです。楽しみにしています( ´ ▽ ` ) (2018年5月21日 12時) (レス) id: 28eb8ac8ae (このIDを非表示/違反報告)
ひみさ(プロフ) - やっぱり、僅差だったんですね〜(*^▽^*) 両方書いていただけるなんて…ありがとうございます、楽しみにしてます♪ (2018年5月21日 12時) (レス) id: 6eb2ce4a4e (このIDを非表示/違反報告)
You∞(プロフ) - はじめまして。いつも楽しみに読ませていただいています。私は、大倉さんとのラストが読みたいです。 (2018年5月19日 22時) (レス) id: d4e699acfa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:fool x他1人 | 作成日時:2018年5月1日 9時

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