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再会。1 ページ1

ASide


あいつに会うのは、
大学の卒業式以来だから、
かれこれ3年ぶりだった。



今日は6月5日だから、

正確には、

3年と3ヶ月プラス3日。



いつもの金曜のように、
仕事帰りに一杯だけと、
立ち寄った行きつけのバーのカウンター席に、

その広い背中を見つけて・・・


思わず、息が止まった。


学生時代とは違って、
スーツ姿が板についてるけど、
その横顔は、
時が止まったかのように変わらない。


店の入口に立ち尽くしてる私になんて、
気付かずに、
友人らしい、
隣の同じくスーツ姿の男の人と楽しそうに話し込んでる。



あの日のことが胸に痛いほど鮮明に蘇る。


あのカウンター席で、
たった一度、
交わしたキスの事が・・・



大学の4年間、私とあいつ、
大倉忠義は、
気の置けない友達で、
飲み仲間で・・・


男女間の友情なんてありえないって笑う同級生たちを尻目に、
私たちは男同士のような友情を深めていって。



持て余した莫大な時間を、
くだらない事に情熱を捧げることで、
退屈という名の青春を謳歌してた。



壊したのは、私だ。



大学の卒業式の後、


大倉は慣れないスーツ、
私は晴れ着の袴姿のまんまで、

昼間っから、行きつけのバーで飲んだくれてて・・・


あいつは地元の大阪で就職が決まってて、
もう会うのもこれが最後かもしれないと、


言いようのない寂しさと、
焦燥感が胸をしめつけてた。



最高の友達ごっこが、
無性に切なくなって。


抑えきれずに、


好きと打ち明けて、
自分からキスをした。



多分、最初から好きだった。

認めるのが、怖かっただけ。



大倉は最初、すごくすごく驚いた顔して・・・



酔っ払いの酒の席での失敗、
笑い話にすることも出来たはずなのに。



いつもよりも低い、
それまで聞いたこともないような優しい声で、



「・・・ごめん。
ごめんな」


そう、呟いた。



私の長い長い片思いは幕を閉じた。



はずだったんだけど。



就職してからも、
なんだかんだで、このバーに通ってる私は、

すっかりあいつの亡霊に取り憑かれた喪女なんだろうな。

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yume.no.(プロフ) - 更新ありがとうございます!もうすでに切ないですねー( ; ; )両方楽しみにしてますね♪ (2018年5月21日 17時) (レス) id: 716f977705 (このIDを非表示/違反報告)
マッキー(プロフ) - おお!両方めちゃ嬉しいです!楽しみにしていまーす! (2018年5月21日 13時) (レス) id: 91ea55fdc2 (このIDを非表示/違反報告)
にゃー(プロフ) - うわぁ!本当に両方書いて頂けるなんて、嬉しいです。楽しみにしています( ´ ▽ ` ) (2018年5月21日 12時) (レス) id: 28eb8ac8ae (このIDを非表示/違反報告)
ひみさ(プロフ) - やっぱり、僅差だったんですね〜(*^▽^*) 両方書いていただけるなんて…ありがとうございます、楽しみにしてます♪ (2018年5月21日 12時) (レス) id: 6eb2ce4a4e (このIDを非表示/違反報告)
You∞(プロフ) - はじめまして。いつも楽しみに読ませていただいています。私は、大倉さんとのラストが読みたいです。 (2018年5月19日 22時) (レス) id: d4e699acfa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:fool x他1人 | 作成日時:2018年5月1日 9時

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