戦犯 TheLastBorder

覗いてみた心 ページ49

リスト君の睡魔は夜を待たずに姿を見せた。夕方になる前からうつらうつらとし始め、夕焼けが燦然と輝いている頃にはその光に背を向け、ソファに寝転がり呼吸を静かにさせた。
ふ……と気になった。彼はどんなことを考えているのか、面倒くさいことしか言ってこない彼は常日頃からどんな思考を抱えて生きているのかを。好奇心に駆られて彼の心を見てしまった。
……意外だった。彼の心の中は何も無かった。寝ているからなのだろうか、不気味なぐらいシン……としていた。
ただひとつ、淡く赤く光る何かがあった。それは手紙だった。封は閉じられていなかったから中身を簡単に見ることができた。

『セツナさんへ

僕はあなたが嫌いでした。言葉を選ばないで、考えていることが読めなくて、空元気ばかり振り撒いているようにしか見えなくて、見ていて不安になるばかりでした。
だけど最近、気付いたんです。僕はあなたのことしか考えていない、あなたが無事であることを見たら安心しちゃう、あなたも何かに苦しめられている……
それが分かったとき、気付いてしまったんです。僕はあなたが好きなんだと……
理由はありません。というより、分かりません。不思議ですけど、これが事実です 』

ここで文字は途切れていた。驚いてしまった。彼が私が好きだなんて……まさかそんな、と思っていた。

「……セツナさん？」

後ろから、リスト君が不思議そうな顔をして立っていた。彼の視線は私の顔から手紙を握っている私の手へと……

「……っ！止めてくださいよ！」

その瞬間で顔を赤くした彼が私に飛び付いてきた。その反動で手から手紙が離れた……

「うわっ！！」

私たちは同時に声をあげて現実の世界へと戻った。私は彼の心の中から、彼は夢の世界から……

「……セツナさん」

私は混乱する体に操られるように部屋の外へと出ていった。

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