戦犯 TheLastBorder

それぞれの世界の違い ページ46

エレメデスに身を任せている私たちは、今は空の中。
こっちの世界では『エレメデス』というのは『救世の聖母』と呼ばれている女神のことだそう。こういう画期的で人類を救うだろう物にはこうして神様の名前が授けられるそうだ。

「不思議そうにキョロキョロしてやがるな。初めて見る乗り物だからか？」

今回の運転手はイシガミさんではなかった。彼は私と向かい合うように席に着いている。

「色々教えたげようか？『パラレルワールド』についてを」

いきなり声を張って言い出した彼は、私がビクッとしたのを確認したものの、私の是非は確認せずに話を始めた。

「パラレルワールドって言うのは、ほぼ無限にあるものなんだ。今この瞬間も時空は分裂している。分裂した世界の時間が休むことなく、しかし交わることもなく進んでいる……分裂した世界(ワールド)が平行(パラレル)している……だからパラレルワールドって言うんだ」

身振り手振りを大袈裟にして説明をしてくれたのだが、言葉を選ぶセンスががあまりにもチャラく感じてしまい、上手く頭の中に収められなかった。どちらにせよ、私には今更すぎる情報だったからマトモに覚えようともしなかったが。

「……ということは、お互い絶対に『差異』という物が表れる。例えば、お嬢ちゃんの世界にはエレメデスは存在しないだろ？」

「勿論。こんな乗り物は今までに見たことなかった。空と海と陸を進めるそんな夢みたいな乗り物……」

しかも、乗り心地も抜群。乗り物酔いの酷いリスト君が座っている体勢のままだが、うなされることもなく安眠している。

「だがね、こっちの世界では『飛行機』という乗り物が衰退したんだ」

飛行機といえば、私たちが海外旅行に出るときは絶対に乗るであろうあの飛行機であろう。空を見上げれば、雨の日でなければ見ない日はない。

「飛行機の事故が多発しすぎて危険な物として見なされたんだ。飛行機の事故はお嬢ちゃんの世界でも多発しただろう？あの時期に飛行機を捨てた世界が俺たち、飛行機を改良して乗り続けているのがアンタら。それだけの違いさ」

また、使う言葉すら違ってくるという世界もあるらしい。中には文明すら作られなかったり、アダムとイブのようなことが未だに続いている世界もあるらしい。
『そういうのも、パラレルワールドの面白さってもんだろ』と、最後に言われた。

リストの心→←え？お前も来んの？

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