戦犯 TheLastBorder

果たしたくない ページ25

乗車して早1時間。リスト君はとうの昔に後部座席を占領しノックアウト。今ではもはや呻き声すら聞こえない……死んではいない、失神しているのだ。

先ほどから続く車道は、普通の車道のスピードで走ることすら危険である。
おまけに、対向車が来たら通過は絶望的なほど狭い道である。
そんな道を、80km/h近くのスピードで走るのはアミとワイルド車(自重済み)、もはや車の戦犯である……彼女は粋がっているのか、高らかに笑いながらドリフトを決めるようにハンドルを操る。
一つ確信した。アミは某カーアクション漫画の見すぎである。

だが、ある場所を境に、別の恐怖を体感することになる。

「……あの、冷房でもつけました？」

何故だか、急に肌寒くなってきた。既に鳥肌が立っている。だがアミは『つけてない』と言う。確かに、前の二人は別段『寒い』というような仕草を見せない。
私だけが、寒さを感じている。リストは失神から回復しないためなんとも言えない。……変だ。

『うぅ……』

呻き声が聞こえた。リスト君が目覚めたのかと思い、後ろを見るが、リスト君はまだ失神していた。
だれの声だろうか……

『きゃきゃきゃきゃきゃ……』

と、甲高い笑い声が聞こえ、ついに私は声をあげた。『何事か？』というようにアミが後ろを振り向く。

「どうした、何かあったのか？」

と、心配する声をかけてきてくれた。

「今……呻き声が聞こえて……聞こえなかったんですか？」

「声……か。幽霊かね？ だったら、もうすぐかな？ アンタが行きたがっていた森だよ」

と、平然という。まさか、魔王の城とやらは幽霊がでるのかい。聞いてないよ……

「これが目的だったんだろ？ もし幽霊が嫌いだったら、覚悟しときな。うじゃうじゃ出てくるかもしれないから」

えぇ……目的を果たすのって、こんなに怖い思いをしなきゃいけないのか……

引きかえそうかな……冗談だけど。

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