戦犯 TheLastBorder

とある少女 ページ3

新しいパパが来てすぐにママが死んだ。不運にも、交通事故に鉢合わせになってしまったそうだ。
初めて死体を見たときは、すごく切なかった。ママの顔は、信じられないくらい綺麗だった。体がぐしゃぐしゃなのに、顔だけはすごく綺麗だった。脳にダメージを受けたとは思えないほどの綺麗さだった。
初めて感じたんだよ「ああ、これが”死”なんだ」って……
会社の女社長だったママは、ヤバいくらいの遺産と豪邸を遺して逝った。
それからなんだよ。偽者のパパが荒れ始めたのは。金髪で、ピアスだらけである偽パパは私の予想を裏切らないでくれた。
毎日豪遊三昧、尻の軽そうな女を沢山引き連れて家の中で大人のパーティ。朝起きてリビングに行けば……
香水やら、お酒やらの臭いが私の鼻を気持ち悪く刺激してくる。
反論すれば暴力を振るうことは予想できる。偽パパはそういう予想ばかりは的中させてくるから、私はもう関わらないことにした。
そう、家出をすることにした。話をかけてこない偽パパのことだ、私が消えても気付かないだろう。
そう決意して、荷物をまとめた。玄関に行ったとき、偽パパは初めて私の想像を裏切った。

『急性アルコール中毒』

偽パパの死因だ。まさか……とは言わない。死んだことはビックリしたけれども、死んだ理由の想定は容易かった。
むしろ酒を浴びるほど飲むようなバカだったから死んだ理由の想定はできた。

こうして、家を出ていく必要もなくなった私は、一人寂しく大きな豪邸で、莫大な二人分の遺産に囲まれて生活することになった。
ああ、なんだろう。仕事付けのママには元々執着が無かったから、死んでも心底悲しんだりはしなかった。あの死に様はさすがに切なくなったけど。
『一応の』パパが死んだ瞬間は清々した。
ああ、悲しめない。涙も出せない。大切に思えるモノを目の当たりにしたことがない。

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