▽. ページ7
俺は特にコンビニで買うものはないので、サムのお会計が済むまでうろちょろ歩き回っていると、Aがお菓子が並んだ陳列台を食い入るようにじっと見つめていた。
驚かせようと思い、バレないようにそおっと近づくと、Aの目線の先は、"期間限定"という文字が強調されたチョコだった。
「欲しいんか、これ」
「っ…驚かさないでよ」
覗き込むようにして声を出せば、Aは肩をびくつかせて振り返った後、すぐに顔をチョコの方へ向き直した。
「そないにじっと見つめたらチョコに穴あくで」
「…うん、分かったから、
ちょっと離れようか、近い」
こっちを見ずに言うAをよく見れば、耳が真っ赤になっていて、唇がAの耳に触れそうな距離だということにハッと気付く。
なんだ、さっきまでなんともなかったのに、言われてしまうとこっちだって意識してしまう。
だけど目の前で縮こまっているAをいじってやりたいという気持ちの方が勝っていた。
「何や、照れてんの？」
「からかわないで」
もう少し近づいてそう言えば、Aは俺の胸板を押して強引に引き離した。
Aの手元ににある北さんから貰った紙袋が目に入る。
委員会でしか関わりのない北さんはあげて、幼なじみの俺はあげてないことになってんねんな。
Aは俺を引き離した後もチョコを見て何か考えているし、
この流れなら、別に自然やろ。
「あー、しゃーないな、ほな俺が買うたるで」
「いいや、いらない」
「…」
Aは素っ気なくそう言うと、スタスタとコンビニを出ようと歩き始める。
「おい、何やねんそれ！
あんな穴あくほど見とったやん！！」
「わっ、ちょ、侑声大きい」
せっかく買うてやろうと言ってやったのに、呆気なく断られたのが気に入らなくて、Aの手首を掴んでくいっとこっちに引き寄せた。
軽いAはいとも簡単にバランスを崩し、俺に寄りかかる。
「…侑が言ったんでしょ。
今日貰ったの食べなきゃだし」
『早く離してよ』と耳元で拗ねた声色でAが呟く。微かな吐息がくすぐったい。
なんや、気にしてんのか。
あんなの、ただの冗談やのに。
「あんなん気にせんでええ」
「ツム、何Aにセクハラしてんねん」
『ツムの加齢臭がうつってまう』なんて肉まん片手に言うサムに、俺からAを引き剥がされた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 75人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：うめ干し | 作成日時：2020年4月17日 20時
