名無しのプレゼント (ページ13)

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朝練がいつもより早く終わり、治と一緒に教室に入ると、Aがこちらにやって来た。

「この前の応援どうだった？」

軽く挨拶を交わした後、すぐ本題に入ったAに、運動した後の少しぼーっとした頭が反応するのに遅れて、後に土曜日の練習試合のことだと察する。

「…まぁ、良かったんちゃう？
華やかでやる気出るわ」

隣の治は言葉とは裏腹に、眉間にシワを寄せる。
治も侑と同様、よく思っていないらしい。

双子が騒いだ藤田が馴れ馴れしい事件。
俺が侑に執着の言及をした後、治はどこか吹っ切れた様子だったけど、侑はどちらかというと調子が悪かった。

「…そう？倫太郎は？」

Aも治の言動が一致していないことに不思議そうにしながらも、深入りせず俺に視線を移した。
ちゃんと俺の下の名前を呼んで。

治がそれに反応して、さらに眉間のシワを深く刻んだのを俺は見逃さなかった。
言葉にはしないだけで、視線が俺に文句を言う。

…面倒くさい。
双子そろってこじらせて、俺を巻き込んで。

でも二人に決定的な違いがあるとすれば、治はちゃんと分かっているということ。
『幼なじみ』という言葉も、今俺に向けている視線が含む感情も。それで、どこか割り切っている。

「俺は別に。
まぁ侑は気に障ったものがあったみたいだけど」

そう言うと、Aは分かりやすく表情を固くした。

「やっぱり。侑怒ってる？」

「怒ってはないと思うけど、…何でそう思うの？」

「なんか試合中機嫌悪そうだったし、
…手、振っても視線そらされて」

目を伏せがちに言うAに、自覚はあるんだ。と心の中で言う。

その悲しそうな、不安そうな表情は、どこから来ているんだろう。

試合中機嫌が悪かったのは、治もだった。
手を振っても治は無視しなかったのか、それともそもそも治には手は振らなかったのか知らないけど、

治が割り切っていることに、納得した。

「Aは何も悪ない」

隣から手が伸びて、それはAの頭の上に乗っけられた。

なんとも形容し難い表情だった。
優しいけど、どこか寂しそうな。
まるで侑相手にそんな顔する必要はないと言うように、治は言った。

「Aはそのままでいいよ」

治に頭を撫でられてポカンとしているAに言って、自分の席に向かう。

そのままでいい。
そのまま、『幼なじみ』として双子と居れば、それで。