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「あ、そうそう、治、これありがとね」



少したわいもない会話をした後、Aは『これ』と言って包装された牛のストラップを見せた。

サムはそれをパッとしない顔で見るが、Aは続けて言う。



「机に入れてくれたの治でしょ?
私がこれ好きなの知ってるの治くらいだもん」



…俺も、サムと同じお前の幼なじみやんな?
なのに、Aはそれ好きなんサムしか知らんと思てんの?


俺は興味ないフリをして、二人から視線を外し残りの弁当を一人黙々と食べ始めた。
残り少ない目の前の弁当を見つめながら、耳はしっかりと二人の会話に傾ける。

胸が苦しい。落ち着かない。
サムがどんな反応をするか、気が気でなかった。



「…知らんけど、それ」

「あれ、そうなの?」



そのサムの言葉に、少しだけ、救われた気がした。

サムがAと仲良い女子ではないのかと言うと、Aはすでにそいつには聞いていて違っていたらしく、『んー』と顎に手を当てて何か考え出した。


ふと弁当から顔をあげてAを見ると、目が合う。



「じゃあ誰だろ」



目はそらされて、サムのおかげでせっかく救われた気がしたのに、一気にどん底へと落とされた。


…俺っていう選択肢はないんやな。
幼なじみやのに。


半分冗談でも、俺か?って聞いてくれれば素直に言えたかもしれないのに。


『それ、俺やで』って。



でもこうなるのは、こうなってしまうのは、全部俺のせいだってわかってる。



「ほい、俺からはこれ」

「わ、ありがとう。いちごミルクだ」

「好きやろ、それ」

「うん、後で大事にいただくね」



知っとる。
サムだけじゃなくて、いちごミルクが好きなん俺も知っとるで。


あぁ、俺もサムみたいに直接渡せばよかったんか。

そうすれば、こんな思いせんでも済んだんか。



いや、今の俺には、ああする他選択肢はなかったんや。

▽.     →←▽. にちじょう



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作者名:うめ干し | 作成日時:2020年4月17日 20時

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