名無しのプレゼント (ページ1)

今日:3 hit、昨日:2 hit、合計:12,994 hit

▽. にちじょうページ1

「何、バレー中でもないのに騒がしいんだけど」

昼休み、いつものようにサムと角名のクラスに銀島とお邪魔して、テキトーに机をくっつけて弁当を広げていると、向かい側で食べている角名が怪訝そうに顔を歪ませていった。

「…別に大声出してへんやん」

「喧しいねん、動きが」

痛いところをつかれたと口籠もりながら答えると、角名の隣にいるサムが米でいっぱいになった口を開いて言った。

「せやな、なんか今日侑ため息ばっかやな」

「ツムのことや。どーせしょうもないことやろ」

「うっさいわ！別に何もあらへんし」

悪態つくサムに怒鳴れば、『うっさいのはそっちや』と鬱陶しそうに軽くあしらわれた。
俺はどれだけ落ち着きなかったのか。

…『しょうもない』

確かに、サムからすれば『しょうもない』ことかもしれない。でも俺にとってはとても重大で、平生としていられないくらいソワソワしてしまうもので。

アイツ、気付いたんかな

チラッと視線をやると、手の中にはいくつか綺麗に包装されたプレゼントがあって、嬉しそうに友達と談笑していた。

「誕生日おめでとー！」

「わ、ありがとう」

放課後も部活でまたたくさん貰うんやろうな。
幼なじみのアイツ、Aは部長やし、慕われるタイプやし。

三人の会話を軽く聞き流しながらしばらく見ていると、突然アイツと目があった。

「治」

アイツの足はどんどんこっちに向かってきて、何かと思えばサムに話しかけた。

三人はAを見るや否や、『誕生日おめでとう』と声をかけた。Aも少し恥ずかしがりながらお礼を言う。

俺も、三人と一緒に声をかければよかったのに。
それなら別に不自然じゃない。
『おめでとう』って、祝えばよかったのに。

何故か言おうと開いた口からは言葉が出てこなくて、タイミングを逃した俺はからっぽな口を閉ざした。