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及「ねぇ、どう思う？」
岩「…Aの事か？」
Aの背中を見送り、体育館に戻った後、ふと及川が呟いた。
岩「何かあったのは明白だな」
及「だよねぇ…」
人差し指を立てて、その上にボールをクルクル回しながら真剣な顔をする及川を見て、岩泉は言う。
岩「だけど、それに踏み込む権利は、俺らにはねーよ」
岩泉の言葉を聞くと、回転していたボールを止め、及川は納得いかないようすで床に置いた。
及「だけど、気になっちゃうじゃん。
あんなに上手いのにバレーを辞めたいって思うほどの事だよ？」
今度はボールを床に叩きつけながら言う及川に、岩泉は及川がいつかの自分とAを重ねて見ているのだと思った。
だから、そんな真剣な表情をするのだと。
岩「アイツにも、支えてくれる奴がいるんじゃないのか」
及「…いないから、辞めたいって思ってるんじゃないの？
俺は岩ちゃんが居たからこうしてここに俺は居るけど、居なかったら多分、自己険悪に陥ってるよ」
ボールを顔に近づけ、高めのサーブトスを上げると、及川は力いっぱい打ち、強烈なサーブはコート内の端ギリギリの所に落ちた。
そしてこう続ける。
及「Aにも必要なんだよ、
岩ちゃんみたいな人がさ」
そう言って自分を見る真っ直ぐな及川の目に、岩泉はどこか射抜かれた気分だった。
ーーー
岩「こんな所で、何してんだ」
ある日の部活終わりのこと。
その日は及川が風邪を引いてしまい、岩泉は一人で帰路を歩いていた。
その帰路の途中にある公園に、一人、ブランコにゆっくりと揺れている人影が目に入った。
その人影はAで、岩泉は引き寄せられるように近づいた。
「岩泉さん…」
声をかけられたAは、ゆっくりと顔を上げると、そう呟いた。
岩泉を見るAの顔には、涙の跡があった。
何があったのかはわからない。
ただ、こんな所で泣いてしまうほど、辛いのだということは見てとれる。
及川には『踏み込む権利なんてねぇ』なんて言ったけれど、実際に相対して見ると、そうはいかないのだと実感した。
岩「話を聞くことは、できるぞ」
岩泉はゆっくりとAが揺られるブランコの隣に腰をかけ、静かにそう言うと、Aは下を向いた。
「…今から言う事は、ただの私の独り言です」
消えてしまいそうなか細い声で、Aは話し始めた。
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作者名：うめ干し | 作成日時：2018年10月9日 18時
