手を握って (ページ3)

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1話ページ3

心臓の動悸が止まらなかった。

寒いのが苦手だった理由。年上の女性が苦手だった理由

怒鳴り声、大きな音が苦手だった理由。

全部わかった。

夢なんかじゃなくて、いつかの記憶だった。

でも俺の両親は優しくて暖かい人で、家にはベランダはなかった。

これって所謂｢前世の記憶｣というやつだろうか。

暫くしたら落ち着いてきて冷静に準備を始める

着替えるために上の服を脱ぐと寒くて、思わず手が震える

心臓が握りつぶされたようにキュッとなって苦しかった。

怖い。

ベランダのザラザラとした冷たい地面の感触。

ヒリヒリと肌を傷つける冷たい風。

換気扇の近くはもっと寒くって、手の感覚が無くなっていった

殴られた所だけ熱く熱を持っていて気持ち悪かった。

ベランダから見える手を繋ぎながら家へ帰る幸せそうな家族が憎くて仕方がなかった。

母親に叩かれる時に香る甘ったるい香水を思い出す

｢.....っ、おぇ、｣

思い出した所為でぼんやりとした恐怖がより鮮明に感じた。

そんなことを考えているといつの間にか時間が来ていてふらつく体で急いで支度をする。

マネージャーから｢もう下に着きました｣と連絡が来ていることに気がついて家を出る。

寒さに怯えながら車に乗るとマネージャーに挨拶をする。