心の穴 ページ45
悲しませるつもりなんぞなかったんじゃがのう
前はどうじゃったんじゃと聞けば泣きそうな顔で俯いてしもうた…
サ「…まぁ今はまだええ」
「ふふ。まさかこんな事を話す日が来るなんて思ってもなかった…ありがとう、サカズキ、ボルサリーノ」
ボ「なにがだぁい?」
「あの時助けてくれて。嬉しかった」
サ「ふん」
だったらんな顔せんと笑えばええじゃろ
…はぁ。
泣きたいなら泣けばええっちゅうに。
「じゃ、私はおばさんが待ってるから帰るよ。じゃぁね、体には気をつけて」
サ「?」
パタン
体には気をつけて?
どういう意味じゃ?
ボ「まるで最後の分かれみたいに言うねぇ?」
サ「気に食わんのう」
まさかこれで縁がなくなるとでも思っとるんか?
わしはお前を海軍に引き込むと言ったはずじゃぞ
忘れとるんか?
―――
「あー…寂しいなぁ。」
江戸の街を思い出したからかな?
それとも、もう2人と会うこともないと思ったからかな?
私はまだあの2人と仲良くしていたかったんだけど。
でも正体明かしたし。
海軍入隊も断ったし。
会う理由がないよね
「はぁ。とりあえず明日家に帰るから。準備してねよー。」
きっとこの痛みも時間が解決してくれるさ
まだそんな深く関わってたわけじゃないから。
しばらくすればまたいつも通りに戻れる。
「伊藤さんの時もそうだっから。大丈夫。きっと大丈夫。」
ううん、伊藤さんだけじゃない。
みつばさんの時だってそうだった。
失ってもまた立ち上がれたから。
…でも…
「なんで…今回は立ち直れないんだろ。」
ずっと心に穴が空いたまま
江戸の皆の顔が、忘れられない
胸が…苦しいよ…
「近藤さん…ごめんね…私何も孝行できなかったや。人生の終わりにありがとうすら言えない娘だったね」
なんとなく部屋に戻れなくて廊下から見える夜空をボケーと眺めてみる。
あぁ、寒いな。
顔が冷たいや
「…グス…」
風邪ひく前に部屋に戻らないと
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作者名:あつやき玉子 | 作成日時:2022年10月1日 22時