煌めき 2 (ページ10)

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「A？」

きちんと話すから五輪が終わるまで待って、と
あの部屋で話してからは祐希は練習に、
私はアナリストの仕事に忙しくバタバタとしていて、
2人で話すのは一昨日ぶりだった。

マサさんに引っ張られてダンボールを置き終えて、
食堂で晩御飯を食べ終わった私に
祐希はロビーで話そうと持ちかけてくれたのだけど、
まだ緊張しているというのが正直なところだ。

『どしたの呼び出したりなんかして』

「呼び出すとか人聞きの悪いこと言うな」

『だって実際そうじゃんか』

まるで2年前のあの頃に戻ったように、
隔てる壁はなにもなく話せることが心の底から嬉しかった。

でもそれと同時に同じようでどこか違っていて、
もう二度とあの頃の関係には戻れないという現実が
紛れもなくそこに存在していることに苦しくもなった。

『冗談もいいけど本当の用件はなに？』

ふたりで微笑みながら交わしたいくつかの会話のあと、
こう聞いた私の質問に祐希からの返答はない。

ふと見上げた祐希の顔はいつになく真面目で、
見ているこちらまで息を飲んでしまいそうなほどだった。

メディア関係者やファンは、
石川祐希は穏やかな人だとよく言う。
けれどそれは違う。
彼は物事にまっすぐ向き合う大の真面目人間だ。

『祐希、？』

もう一度問いかけた私に、まだ固い表情をした祐希は答えた。

「俺鈍感だからさ、全然気づかなかったけど

　いろんな人、いっぱい、好きなんだって」

必死に紡がれたその言葉は支離滅裂でうまく伝わってこない。

「Aのこと、良く思う人たくさんいるって」

しばらくしてもう一度呟かれたその言葉で、
私はようやく意味を理解した。

「その首元のやつ、マサさんのでしょ」

『違う、これ私のだよ』

よくあるスポーツ用のネックレスだから、
俺のだってバレそうになっても自分のだって言えば大丈夫
と、ほんのさっきマサさんが言ってくれた。

「ねえ、」

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