煌めき 2 (ページ3)

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太志くんうしろ

手元でピコン、となったiPhoneには太志くんからのLINE。
思わず振り向くと優しそうとしか言いようのない笑顔で
柱から顔を出して手を振る太志くんの姿。

「藍と仲良くなったの？」

のっそりと歩いてくる太志くんは不思議そうにそう言った。
別に仲良くなってないよ、と答えた私の手首は太志くんに
結構な力で引っ張られて思わずバランスを崩す。

『ちょ、わあぶないよなに』

「藍と仲良くしたら祐希が嫉妬するよ？」

『だからってそんなに引っ張らなくてもいいじゃんか』

「悪いことしたからお仕置き」

発せられた言葉に理解が追いつかなくて、
私はまだ掴まれたままの手首に視線をやる。
大きくてごつごつした手は親指と人差し指、
そして中指のたった3本で私の手首を余裕そうに掴んでいる。

『手、離して』

「やだ」

『え、？離してよ』

さっきと同じ顔で笑っているはずの太志くんの顔は、
いまはとっても意地悪そうに見えてなんだか悔しい。

手首にかかる力が徐々に強くなっているのを感じる。
まるでつねられているかのようにジリジリと痛む手首を
ただ見つめるだけで私はなにも答えられない。

「Aちゃん？」

呼ばれた声に30cmも背丈の違う太志くんを見上げると
さっきよりもだいぶ顔と顔との距離が近づいている。

『太志くん、顔近いです』

「だめ？」

『だめです、普通に

　てかさっき祐希がどうのこうのって

　祐希のこと気にしてたの太志くんじゃんか』

またもや突然離された手首に私はまたバランスを崩した。
太志くんはなにも言わずにチームメイトの方に歩き出す。

2.3歩進んだところで太志くんは振り返って言う。

「嫉妬すんの祐希だけじゃないし

　俺祐希とAちゃんのこと応援できるほど優しくない」

聞こえるか聞こえないかの小さな声で目も見ず
そう伝えた太志くんは今度こそチームメイトの方に向かった。

まだ始まったばかりの代表活動は、
競技以前のところで止まって私を惑わせている。

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