煌めき 2 (ページ13)

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「あ、Aさん？開いてますよ」

鳴らしたノックにそう答えつつも
わざわざドアを開けにきてくれた有志くんは、
とびきりの笑顔で私を迎えてくれた。

「あ、恋子さんこんばんは」

有志くんとは対照的に緩やかな空気を身にまとう藍くんは、
ご丁寧にこんばんはと挨拶をしてお辞儀までしてくれる。

『こんな夜遅くに呼ぶなんてよろしくないね、君たち』

「僕は止めたんですけど有志さんがどうしてもって」

「え、なにこの雰囲気俺のせい？全部」

責任のなすりつけあいを繰り広げるふたりに、
私は紙とタブレットを向けて説明を始める。

さっきまでの騒がしい雰囲気はどこへやら、
ふたりは真面目に話を聞いて
時々きちんと質問もしながら最後まで聞き終えてくれた。

『一応これで全部かな

　実は晩御飯の前に作ったデータに少しミスがあったから

　修正したバージョンを今伝えた感じ』

ごめん、と手を合わせて謝りながら言った私を
有志くんはぽかんとした顔で見つめる。

「Aさんもミスとかするんすか？」

あまりにも大袈裟に驚くから、私はつい笑みがこぼれる。

『人間だもん、当たり前じゃん』

「あ、いやそうっすよね」

どうしたんですか有志さん、と
藍くんに突っ込まれたあともまだ驚いた様子でいる有志くん。

私は黙り込んで、藍くんはなにも言えなくて、
変に静かになった部屋の空気を変えたのは、
ペットボトルの水を差し出して
こんなものしかないですけど、と言った有志くんの一言だった。

「なんか勝手にAさんのこと

　完璧人間だと思っちゃってる自分がいました」

今度は藍くんの口からそんな言葉が出てくる。
違う、私は完璧なんかじゃない。
脆くて、あやふやで、曖昧で、ひとりじゃなにもできない。
そんな風に思いながらも私は、
弱さを見せたくない一心で笑いながら言う。

『やだなあ、ふたりとも

　完璧人間なんて祐希くらいしかいないよ』

バレーもできてかっこよくて憧れの先輩でしょ？
と続けた私の言葉にふたりの返答はない。
無言の圧力とはきっと、まさにこのことだ。

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