34,「無敵ヶ原富士丸」 ページ35
.
「……お前誰だ？」
少年は怪訝そうな不動の問いに答えず、ボールを肩で転がす。そして直前までそうと分からないぐらいのごく自然な動作で、素早いシュートを放った。
「ぐはっ……！」
不動の腹部にヒットして跳ね返ってきたボールを数回リフティングしたかと思えば、少年は瞬く間に灰崎の後ろに回った。驚異的なスピード──誰一人として目で追うことができない。
「──速い！！」
「サッカーで勝負ってことかい！？」
タツヤが氷浦と2人がかりでスライディングを仕掛けるも、少年はそれを容易くかわしてみせる。
明日人も続けざまに仕掛けるが、相手からボールを奪うことは叶わない。
どこの誰とも知れないこの少年に、サッカー日本代表の選手達が5人がかりでも歯が立たない──この異様を極めた状況に、代表達の表情は戸惑いと緊張が入り混じったようなものへと変わっていく。
一方の少年は、彼らを見下すような嘲笑を浮かべてその顔を見回した。
「その程度で日本代表とは笑えますねえ」
「お前は何モンだ！！」
不動が凄むも相手は動じない。
張り詰め切った空気の中、少年はゾッとしたものさえ感じるほどに怪しげに笑ってみせた。
「僕の名前が知りたいのか……僕は、無敵ヶ原富士丸。君達のような『ダメ選手』がFFIに出て日本が恥をかかないように──ここで全員、再起不能にしてやるよ」
────
「──ほんとほんと！ 誰もボール取れなくて……世界との差を突き付けられた、って感じ。めちゃくちゃ凄かったんだよ！？ あ〜、見せたかったなぁ」
共有スペースに、Aのころころと忙しく感情の起伏する声が響く。
彼女の他には誰もいないため、声も自然と大きめになる。なら壁とかにでも向かってひとりで喋っているのかといえばそんなことはない。Aの言葉を受けて返事も返しているのは、壁ではなく電話の向こうの相手だった。
「ふふ、スペインとぶつかる前までには代表来てね？」
「誰がです？」
「いや誰ってもちろん……ぅえっ監督！？？」
危うくソファから転がり落ちるところだったが、何とかギリギリで留まることに成功した。
ギリギリセーフ、と心の中でため息をつきながら、改めて一切の前触れなしに現れた趙金雲の顔をまじまじと見つめる。何なんだこの人神出鬼没すぎないか。
「オッホッホッ、そんなに見つめられると照れちゃいますね〜！」
「す、すみません……？」
Aにも自分がなぜ謝っているのかはよく分からない。目の前の監督のことはもっとよく分からない。
そんな「よく分からない監督」は、改めてAの電話の相手が誰なのかを尋ねてきた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 126人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ヒメアミ(プロフ) - 尊都さん» ほ、本当だ……！(↑)が1文字分ずれてました……！！すみませんすぐに訂正します🙇♀️ご指摘コメほんとに助かります、ありがとうございます！！✨ (10月17日 14時) (
レス) id: a3a881f0ea (このIDを非表示/違反報告)
ヒメアミ(プロフ) - ひややっこさん» ほ、ほんとですかめっちゃ嬉しいです……！！！！！！🥹💓私もはずみんと同じ空間に存在したい人生でした…………応援ありがとうございます！これからも引き続き頑張ります！！🔥💪🏻 (10月17日 14時) (レス) id: a3a881f0ea (このIDを非表示/違反報告)
尊都(プロフ) - 33話のアッキーに訂正するはずみちゃんのイントネーション設定と違くないでしょうか？ (10月17日 0時) (レス) @page34 id: 6a52012404 (このIDを非表示/違反報告)
ひややっこ(プロフ) - めっちゃ面白いしはずみんちゃんがめっちゃかわいいです！！！！！皆の気持ち分かる…これからも応援させてもらいます！！📣 (10月16日 23時) (レス) id: 38a6d254ff (このIDを非表示/違反報告)
ヒメアミ(プロフ) - みい・フローラさん» コメントありがとうございます！！ う、嬉しすぎる〜〜……！😭これからも楽しんでいただけるよう頑張っていきます！💪 (10月10日 22時) (レス) id: a3a881f0ea (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
