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「送ってくれておおきに、北君」

「言うても俺の家もここから五分もかからんけどな」

「せやけど、送ってくれたんやから。感謝はせんと気がすまん」


 食い気味に言うと、「わかるわ、その気持ち」と頷く北君。どうやら彼も相手の負担がどうであれ抱く敬意は一定である、極めて誠実な気持ちの持ち主のようだ。知っていたが。

 かといって、同じ考え方の私が誠実かと問われれば、答えはノー。実際のところ、我儘で締まりのない、どうにもあと一歩、何かが欠けた人間性だと自覚し心得ている。

「寒いんやから、はよ家ん中入り。

 帰ったらチョコの感想送るわ。おおきにな」


「北君も、気を付けて帰ってな。おおきに。

……チョコの感想は、送ってこなくてかまへん」

 恥ずかしくてムズ痒いわ。その言葉は自分に合ってない気がして、素直なその言葉を飲み込んで、気持ちが落ち着いているフリをした。



 がちゃり。最近変えたばかりの家のお洒落なドアが閉まる。それの落ち着いた色味の木は、もたれ掛かった私の背を見た目にそぐわない冷たさで満たした。

 狡い。とにかく狡い。北君は、狡すぎる。予想外のカミングアウト、急に来る今までになかったデレ期に、私の要領の悪い頭はパンク寸前だ。こんな事を言っていては入試も壊滅的なのではないかといらぬ心配までついてくる。

「はは……」

 自傷気味に嘲笑が漏れたが、それを拾う人はいない。もっとも、リビングに行けば、心配性の母がどうしたのと駆け寄って来るだろうが、生憎ここは玄関だ。

 防寒での重ね着のせいか、重くなった体を起こして、荷物を置きに自室へと道を示す階段を上った。


 自分はこんなに堪え性のない人間だっただろうかと、思考を巡らせる。ちょっとやそっとの事ではポーカーフェイス、なんなら常日頃すまし顔だと友人に皮肉を言われたくらいだった記憶があるが。

 恋は盲目……それはあながち間違った事ではないのかもしれない。周りが見えなくなるまではいかなくても、平時の自分をどこかに置き去りにしてしまっているかのような感覚。


……考えるのは、やめてしまおう。ない知識は絞り出せない。ご生憎さまで恋愛事に疎さが滲む私は、そう思って夕食の待つリビングへ向かった。

 メッセージアプリの通知音は、照れくさいので確認することを保留にして。

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Ника(プロフ) - とっとさん» キュンキュンな青春話が書きたかったので、そう言っていただけて嬉しいです…ありがとうございます!北さん魅力いっぱいですよね! (2019年4月2日 9時) (レス) id: b9295c5788 (このIDを非表示/違反報告)
とっと - キュンキュンしました、、、。飴の話とか出てきた時、「あっ、、確信犯や」ってなりました! 北さんいいですよねー (2019年3月31日 23時) (レス) id: f0db948643 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Ника | 作成日時:2019年2月14日 22時

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