ロイヤルミルククラウンのひみつ ページ4
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「なあ、お前そんなに食えんの?」
「……ほしいんなら、あげるけど」
マジで? そういうつもりじゃなかったけどサンキュ。どれならもらっていいんだよ?
丸井くんは私が指差した肉じゃがを小皿ごと持っていく。彼がやたら嬉しそうだし別にいいけど、このくらいの量なら普通に食べられるだろう。たしかに男子と同じ量で普段よりは多めだ。でも元テニス部な訳だし全盛期はこれくらい普通に食べていた。……向こうの机にいる桜乃ちゃんはキツそうだけれど。
男子の中ででしゃばって話す訳もなく適当に相槌を打って黙々と食べた。みんなとそこまで親密じゃないから、こういうところでどう関わっていけばいいか分からない。多分余計に関わる必要もないんだろうし。悪印象のないようにしておこう。そうだ。いつもそう。そうしておけば大丈夫。何か理不尽なことがない限りは……。
「そういやお前、さっき俺らんとこ来た?」
「……え? いって、ないけど」
「マジ? りょーかい。やっぱ仁王オメーじゃねーのかよ」
「俺は行っとらんて言うとるじゃろ」
じゃあお前かよ赤也。は? ちがいますって。ぜってー仁王先輩っしょ。それかA先輩……。でもAはしてねーって言ってるしそういうタイプじゃないだろ。つーかほんとに聞いたんすかあ……? うるっせーなお前……。
話が熱を帯びて盛り上がっていく様子だけどよく分からなかった。そんな私の様子をいつから見ていたのか不意に幸村くんと目が合う。なんの話をしてるのか分からないんだけど。視線だけで尋ねれば彼はああ、とビー玉のような笑みを浮かべる。
「部屋に何度かノックが響いたから開けたのに誰も居なかったみたいなんだよね。誰かのイタズラを疑ってるんだと思う」
「……そうなんだ」
男子中学生らしいというかなんというか、結局私にはなんの関係も無さそうな話で興味が失せてしまった。ああ、嫌だな。変に斜に構えてないで楽しめばいいのに。ひねくれ者の私は適当な返しだけをしてきゅうりの漬け物に箸を伸ばす。テニスは好きだ。だからここに来てる。でも、こういうときはどんな顔をすればいいのかわからない。
こんなことなら桜乃ちゃんと食べれば良かったかな。彼女は青学で仲の良い子とかいるのだろうか。マネージャーって訳でもないみたいだし……。でももし好きな子と一緒にご飯を食べられているなら、そこに私が介入するのは無粋だろうな。私は再びきゅうりの漬け物に箸を伸ばした。
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小麦(プロフ) - 赤兎リエ輔さん» リエ輔さん〜! わざわざこちらの作品にまでありがとうございます! そう言われるとめちゃめちゃ嬉しいです照れちゃいますねウフフ…// まったりですが頑張るのでよろしくお願いいたします〜 (2019年7月28日 16時) (レス) id: c875d84994 (このIDを非表示/違反報告)
赤兎リエ輔(プロフ) - 新作おめでとうございます、!おむぎさんの書かれるお話はやっぱり他の誰にもない独特で引き込まれるような感じで本当に言葉にあらわすことができないくらい好きです…。これからの展開が楽しみです。応援してます(*´ω`) (2019年7月26日 17時) (レス) id: 9a5c590feb (このIDを非表示/違反報告)
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