+２１６+赤子への猜疑心 ページ21
.
言われた場所にたどり着くまでに結構時間がかかった。
「そのために早く切り上げた」という言葉の意味を感じながら
赤く焼けた空に照らされた町から大きく離れた
あまり整地がされていない荒野を見渡せば二つの影が伸びているのが見えた。
公衆電話や自販機など街中でいくつか見かけるモノたちが
何一つないような、こんな辺鄙な場所に
わざわざ好き好んでやってくるもの好きはそう居ないだろう。
きっとあの人影こそがそうだと思い
そちらに寄れば、バラバラに砕け散った岩を前に話す人たち。
予想通りの人物「笹川先輩」と…またも、赤ん坊。
正直もう何も考えたくない。
また赤ん坊が居るなんて深く考えたくない。
そろそろ彼らのせいで街中の赤ん坊にも警戒心を抱いてしまいそうだ。
「む…おぉっ、巳國か！」
「……アイツは、」
私が声をかけるまでもなく、私の接近に気付いた笹川先輩に声を掛けられ
彼と話していた赤ん坊もつられてこちらに視線を送ってきた。
…彼の胸元には、赤ん坊くんと老師と同様に
その姿見に合わない大きなおしゃぶりが括られている。
沢田さんのお父さんが老師に。六道骸が赤ん坊くんに。
彼らに向けられた言葉を選ぶなら「アルコバレーノ」というものに属する人だろうか。
それが何を示す言葉なのか、今の私には分かりかねるが
私なりの解釈で言うならば、「風変わりな赤ん坊」の一員だ。
…現に、彼の背に背負われているのは
私の腹部に取り付けられたものよりも大きな銃火器だ。
世の中の赤ん坊が彼のように…
さも当たり前のようにライフルなんて背負っていたら父兄の方々は卒倒する。
『えっと…様子？を見に来ました。』
「そうか！巳國もこの戦いの仲間なのか…！
こちらは極限に順調だ、先程師匠に技を伝授してもらってな！」
快活に話して下さるのは良いが
この人は彼に対して全く違和感が無いのだろうか？
私の赤ん坊くんに対する諦め…
「まぁ、赤ん坊くんだし。」という思考放棄に関しては
この１年半の経験則に基づいたものだが
山本君や笹川さんを筆頭に、ほとんどの人の
赤ん坊くんや、目の前の彼など常軌を逸した赤ん坊に対する
なぞの順応と言うか、違和感を感じていないのは何なんだろうか…。
思わず彼を一瞥してから先輩に向き直り
『お師匠、さん？』と確認を入れてしまう位だ。
…もちろん、何の疑問も抱いていないようで
明るく「あぁ！」という返事のみが返ってきたが。
…追究するのはよそう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 155人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「原作沿い」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
優波 - お話とても素敵です！続き楽しみにしています。更新頑張ってください！ (12月26日 0時) (
レス) @page31 id: bb04c2cc27 (このIDを非表示/違反報告)
睡-ｽｲ-(プロフ) - 蜜柑さん» 先の見通しを立たせるのに時間を要し、お返事も先延ばしにしていてすみませんでした……。また少しづつ書いていけたら、と思っていますのでお暇な時にでも覗いていって下さったら幸いです。 (2022年4月25日 14時) (レス) id: ab84331ee7 (このIDを非表示/違反報告)
睡-ｽｲ-(プロフ) - お稲荷さん» お時間をいただく返事、更新で申し訳ありません。先の展開に少し見通しが経ったのでまた時間がある際に更新していくので宜しければまた覗いていってくださいね (2022年4月25日 14時) (レス) id: ab84331ee7 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑(プロフ) - とても面白く一気読みしてしまいました！！次の更新も楽しみに待っています！ (2022年2月27日 11時) (レス) id: 33c0f3033a (このIDを非表示/違反報告)
お稲荷(プロフ) - 設定やストーリーがとても自分好みで、つい何度も読み返してしまうほどのお気に入りの作品です。更新再開を楽しみに待ってます！ (2022年2月11日 11時) (レス) @page14 id: 12617f35c7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：睡-ｽｲ- | 作者ホームページ：https://twitter.com/sleep_d_urtk?s=09
作成日時：2021年8月14日 19時
