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+127+赤い壁 ページ32

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女の姿を映した赤い池にベタ座りになる。
ビチャッと音を立てた妙にリアルな液体の感触に吐き気すら覚える



水の音と炎の音だけが耳に響いて脳に響いておかしくなる
耳を塞いで一生懸命聞かないようにした。

耳に手を当てたまま脇を占めて自分を挟み込んで
猫背になって小さく小さく丸まって身を守る



これじゃ、あの人が居ない時のあの部屋の私だ


周りの光景、音が連鎖して全てを鮮明に思い出し始める。
あの日の家も赤い炎が靡いていた。

グルグルと回り始めた視界は赤い壁に赤い床…全てが赤かった。



ふと、耳が急に炎以外の音を拾った

タッタッタッ、と早いリズムかつ規則的な音。
それは誰かの駆け足の様で、ゆっくり音の方角を見やった。

視界に映るのは炎の壁のみ。
それでも音は近付いていた。


ジィッ…と、先程の赤い池に映った女の姿と見つめた時と同様に
釘付けになったように音の発生する方を見つめた。



音が目の前、そう認識した時には炎は裂けた。


赤かった視界は少し澱んで赤黒くなったシミを着けた白に…
白かったはずのシャツに覆われ、見えなくなった




『なっ…、ぁッ!?』



グッと胸下から腹部にかけて圧迫感を感じると後ろに押し出される。
そのまま圧迫感の方向が上を向き、次に来たのは浮遊感。

声を出す暇すら与えられず、身を委ねる以外の選択肢は無かった。


そのまま周りを覆っていた炎から連れ出され
ハッと今の状況・状態が脳内に情報として流れてくる。

まるで塞き止められていた流水が流れ込んでくるようだった。



まず圧迫感の正体は回された腕。
次に視界に飛び込んできた赤黒いシミに染まった白は彼のシャツ

綺麗とは言い難い血に汚れたシャツを着ているのも、炎を裂いたのも
私が探していた人、そのものだった。



肩に背負われた状態からゆっくりと降ろされ圧迫感から解放される
そして、やっとその人と正面で対面した。

頬には擦り傷、切り傷、打撲…端麗なお顔は傷だらけ。
それでも瞳はいつもの様に鋭く、射抜くような視線を浴びせてくる



「……なにやってるの。
 僕は無意味なものを拾い上げた覚えはないよ、今も昔も。」




その突き放すような物言いに対して力強くも優しさのあった手
そして痛々しいその姿と担がれた時に気付いてしまった、いくつかの骨折

そんな状態で人ひとり担ぐなんて無茶を…


彼の全てに私が泣きたくなった
泣けもしない、涙も出ないけど心から泣きたかった





『恭、弥…さんッ。』

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睡-スイ-(プロフ) - ますしんさん» ますしん様コメントありがとうございます!そうなんですよね…昔はさほど気にならなかった辺、大人になったからこその損得勘定なのでしょう…大人になんてなるもんじゃないですね…←なるべく濃く書くことを意識するあまり直ぐ話がいっぱいになってしまいますが… (2020年2月6日 15時) (レス) id: 3400204ee2 (このIDを非表示/違反報告)
ますしん - 確かにその差にツッコミたくなりますよね。お気に入りするんなら評価もできるだろ!って…この作品、内容が濃くて読んでいて楽しいので更新速度低下は悲しいです…それでも見続けるので更新頑張ってください!! (2020年2月6日 15時) (レス) id: 378183aadc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:睡-スイ- | 作者ホームページ:https://twitter.com/sleep_d_urtk?s=09  
作成日時:2020年1月25日 16時

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