+１３９+傷口 ページ44
.
沢田くんが発した言葉に反応する私たちを他所に
彼女は何も無かったかのように沢田くんにも手助けを乞う。
そんな彼女の様子に再び違和感を覚えつつも
警戒するためにも近くに寄ろうと思い、膝の上から恭弥さんを下ろす。
傷に響かせないよう、胴→頭の順でゆっくり下ろして
濁った返事の沢田くんを遮り『私が手伝いましょう。』と声をかける
獄寺さんより先にビアンキさんに駆け寄る。
その背に右腕を回し、彼女の左腕を肩にかける
そして自身の左手は…少し罪悪感が湧いたが彼女の傷口に触れた
それはソフトタッチとか、覆うようにゆとりを持ってではなく
傷口そのものに直接指先で触れたのだ。
もちろん、傷口に触れると言っても
傷を広げたり、押したりしている訳では無いが
普通なら痛いし、知人であろうとその行為に嫌悪すら感じるだろう
嫌がる、痛がるなど、それ相応の反応があって当然だ。
…しかし、彼女はこの行動に対して反応がない
まるで痛覚を失ったかのように。
おかしい、なんて一言では済まされないぞ。
眉間にシワを寄せて彼女の死角から彼女へ疑いの視線を投げる。
その時沢田くんが私の名前を口から零れたように小さな声で呼んだ
きっと私の表情に気付くも、原因・要因が理解出来ていないのだろう。
私の意識が一度沢田くんへ、ズレた時
ビアンキさんが動いた。
私が構える反対側の、右手で何かを握った
そして、敢えて…なのだろうか彼女は私にのみ殺意を見せたのだ。
その矛先は私ではなく、彼女の正面に位置していた人物。
…彼女の傍に転がっていたものを思い出し、少しばかり焦る
「普段の彼女なら」失礼に値するが、肩にかけていた左腕を払い
その脇を潜り、彼女の体の前から彼女が振りかぶった「それ」を右手で掴む
真ん中の長い切っ先を挟むように構える短い二本の切っ先の片方が
先程の自傷のように、今度は手の平の方から突き刺さる
それでも、突き刺さりながら握り締めたそれ…三叉槍は動きを止め
顔につき刺さらんばかりだった正面の彼に深手を負わせることは回避した。
だが一歩遅く、長い切っ先は彼の頬を捉えてしまった
『…すみません、一歩出遅れました。
無傷で済ませるはずだったのですが、頬に傷がついてしまいましたね』
獄「お前…ｯ。なにしやがんだ、アネキ！」
勢いを緩めたものの、顔を狙った彼女の突きは彼の頬に赤い線を彩り
当の被害者は姉の行動に驚いた表情をしたあと、顔を歪め私を見た。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 326人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
睡-ｽｲ-(プロフ) - ますしんさん» ますしん様コメントありがとうございます！そうなんですよね…昔はさほど気にならなかった辺、大人になったからこその損得勘定なのでしょう…大人になんてなるもんじゃないですね…←なるべく濃く書くことを意識するあまり直ぐ話がいっぱいになってしまいますが… (2020年2月6日 15時) (
レス) id: 3400204ee2 (このIDを非表示/違反報告)
ますしん - 確かにその差にツッコミたくなりますよね。お気に入りするんなら評価もできるだろ！って…この作品、内容が濃くて読んでいて楽しいので更新速度低下は悲しいです…それでも見続けるので更新頑張ってください！！ (2020年2月6日 15時) (レス) id: 378183aadc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：睡-ｽｲ- | 作者ホームページ：https://twitter.com/sleep_d_urtk?s=09
作成日時：2020年1月25日 16時
