【REBORN】何が一般的かなんて分からない (ページ32)

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+７９+温度差ページ32

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そうだ、巫山戯んなと叫べばいい
彼は本気で嫌がれば離れていくだろう。「いい人」だから

ポケットの中の警棒で先程の男の様に山本くんを殴ればいい

私なら体内構造だって粗方把握している
野球が出来る程度に殴りつけることだって出来るだろう

反応に遅れたとしても追うことくらい出来るはず
それくらいの身体能力なら私も持ち合わせているはずなのに

ありとあらゆる可能なはず(・・)のことが出来ない

まず、今いる場所から一歩も動けないでいる
それくらい私の拒絶に対する山本くんの反応が予想外すぎた

そんな私を他所に彼は約５０メートル先で
「寒いから巳國も早く帰れよ〜！」なんていつもの声音で言うもんだから困る。

結局言いたいことを一方的に言い切った彼の背中を眺めることしか出来ず
盛大なため息を宛てもない置き土産にして私もその場を立ち去った。

雲雀邸に到着し戸を開く。
微かに奥から物音が聞こえているから、居間かな？

『ただいま戻りました。』

彼が何か作業をしている時、妨げにならないようにするため
恭弥さんに伝えるため、というよりは呟く程度の声量

履物を端に揃えて居間へ向かうと丁度部屋に戻るつもりだったのか
こちらに向かって歩く恭弥さんと縁側、渡り廊下で鉢合わせた

学ランを羽織っていないあたり、結構前に戻られたのか

しかし、この時期にご自身の家だからってシャツのみ、というのは…。
また風邪を召されなければいいが

雲「遅かったね。なにかあったの？」

『いえ、見回り中に何かあった訳ではありません
強いて言うなら不法投棄者の骨を少々…。

あとは赤ん坊くんのお誘いで沢田くんたちのある種の新年会に。』

脳内で考え事をしていた私になかなか鋭い問いかけ

虚言は吐いていない、私が彼に報告すべきなのはこれだけだと思った。

私が一個人として遭遇した出来事など彼には必要ない情報
そう判断し、勝手ながら省略させて貰う

「…そう。」

短く呟くと先程まで進もうとしていた方向に足を動かす

その背に向かって『あまり薄着なさらないで下さい』と声をかければ
まずは顔だけをこちらに向け、私を一瞥。

そのままクルリと踵を返し
コチラへ歩いて来たかと思えば目の前で立ち止まる

「自分の方が冷えきっておいて、よく言う」

そう言って本日２度目
別の人物の温もりが頬に触れる。…今度は片頬だが。

室内にいらっしゃったからか
左の頬に触れる恭弥さんの手の方が少しだけ暖かかった。