【REBORN】神様なんて居るはずない

+２３+全力疾走 ページ26

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声をかけてきた、その人物は山本くん。



彼、放っておけばいいのに大勢の人間の中で
つまらなそうにしていると毎回毎回見つけ出して声をかけてくる。

頼んでないんだけどな


いや、確かに話しかけられれば対応というか…
返事とかそれなりの最低限の会話には応じるけどさ

でもわざわざ用もないのに声掛けは、いらない。


徒競走男子の方で激戦レースと周囲に言われていた
陸上部短距離のホープが揃ったレースに名を連ねた山本くん。

競技前の入場門で整列している時、いつも通りの爽やかな笑顔で
面倒臭い、という気持ちを隠すことなく外部に垂れ流していた私に近付いてきた


彼は天然なんだよね？故意的にグイグイ来てるわけじゃないんだよね？



突き放しづらい人柄が苦手だ。相手にしづらい。

それくらいなら同じ社交的でも笹川了平のような人間の方が
「やかましい」と一蹴しやすいのに。


山「巳國も徒競走なのか！お互い頑張ろーな！」

『あ、はい…』

山「？ 走るの苦手か？」

『いや、別に…可もなく不可もなく』


気さくに声をかけてくれるけど
代わりに周囲の視線に気づかないの勘弁してほしいな

最近くだらない嫌がらせが増したのだって
人気者のこの人らと関わったからだろうし


私は日陰でひっそり生きたいのになぁ


山「お、女子が先みてぇだな。応援してっからな！」



だからその快晴笑顔やめてってば。

ため息をつきながら白線の前に並んだ
ガン見だよ、がっつり名前出しながら応援してきやがるよ…


あーやだやだ。絶対手を抜いてもバレるし話しかけられる
ならば、いっそのこと満足頂けるようやるしかないか

深い息を吐くと共に肩をすくめ、一瞬脱力して
ピストルの音と同時に足に力を籠め、比較的強めの力で地面を蹴った


元の身体能力は周囲よりは秀でていると自負している

また陰湿な女たちにケチを付けられそうだけど
この時はそういうこと色々考えるのが面倒になって脳内から投げ捨てた



何年ぶりに、ちゃんと走った気がする



渋々だったはずなのに周囲の人を追い抜いて風を切るのが気持ちいい


元々はスポーツとかだって好きだったんだよ




…幼稚園の時、貴方が寝坊したせいで遅刻しそうになって
バス停に向かって２人手を繋いで全力疾走したりしたっけ


１００ｍ程度なら息は上がらない

走りきってからゴールの担当の生徒が駆け寄ってくるまで
私は思い出した感覚を探るように手を見つめながら
にぎにぎ手を繰り返し握っていた。

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