Estate ページ1
.
暑い外から帰って、覇気のない声で
「ただいま…」と言うがリビングに届いたのか定かじゃない。
現代の進化についていけていない自分の小学校はエアコンは職員室にだけ。
職員室にそそくさと帰っていく担任の姿を脳裏で思い出しながら
帰宅直後は冷房の効いた部屋で待ち構えているであろう母を少し羨ましく、恨めしく思っていた。
蒸し暑さと日照りのダブル攻撃に私の体には汗が流れていた
「置き勉」というのが禁じられていて多くの教科書が入ったランドセル、
それと自分の背中と間は通気性最悪。汗で服がべったりだった。
噂では世の中「電子黒板」とか「iPad」で授業をする学校とかが増えているらしい
つまり紙媒体の教科書とか必要が無い＝荷物の軽量化、資源の保護が可能
「多面的に最高じゃないか、さっさと導入してくれ。」とか
普段なら考えないくせに暑いからってその時だけ文句を脳内で考えていた。
あぁ、早くリビングに。涼しい空間に入ろう。
普段母に靴は並べろと口酸っぱく言われていて覚えている時は並べ直すのに
この時は覚えていたが「後でいいや、まずは涼もう」と脱ぎ捨てて部屋に上がった
あ、あと…この時は気付けなかったが
珍しく父の靴が私の帰宅より先に玄関に並んでいたな。
開け放ったリビングの扉。
流れ込んできたのは、お待ちかねの「冷気」ではなく期待を裏切り「異臭」だった。
伝う汗の意味・理由が一変。
小学２年生の私の身長では扉の前だとソファが大きくて
ソファの奥や他にも色々な家具が邪魔をして見えない範囲が多い
でもソファの下から広がっていく「血の池」ははっきりと見えてしまった。
子供の好奇心、不思議への探求は恐ろしいもので私はそっちは近付いた。
そこに見えたのは血の池に横たわる母の頬を
血塗れた手でゆっくり、愛おしそうに撫でる見知らぬ男。
そしてベランダの先に転がる赤いポリタンクが複数。
ランドセルを背負ったまま押し入ったせいでランドセルから音が鳴る。
目が合った。
＿＿＿＿＿＿狂気。
狂気と熱を孕んだその瞳が恐ろしい。
.
「…あぁ、見つけた。」
「僕が知る、本物の由美。」
私じゃない別の名前を唱えた口は弧を描いた
その時私は死んだのだろう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 382人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「原作沿い」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おまんじゅう(プロフ) - 楽しく読ませてもらっております！いやはや、面白いですね！...イラストがブルーベルに見えてしまった... (2020年4月14日 14時) (
レス) id: f0c0a1b934 (このIDを非表示/違反報告)
睡-ｽｲ-(プロフ) - 黒雪 長谷部信者さん» わざわざありがとうございます…！ゆったりとですが更新していきますのでよろしくお願いします！ (2019年8月17日 21時) (レス) id: 1576287cc8 (このIDを非表示/違反報告)
睡-ｽｲ-(プロフ) - さーちゃんさん» ありがとうございます、同じ夏生まれなんですね！ゆるゆるとですが更新していきますのでよろしくお願いします (2019年8月17日 21時) (レス) id: 1576287cc8 (このIDを非表示/違反報告)
睡-ｽｲ-(プロフ) - ぱるさん» 嬉しいです。楽しんでいただけるよう、私自身も満足いくように更新していきます！ (2019年8月17日 21時) (レス) id: 1576287cc8 (このIDを非表示/違反報告)
黒雪 長谷部信者(プロフ) - お誕生日おめでとうございます！これからも楽しみにさせていただきます。更新頑張って下さい＜(_ _)＞ (2019年8月17日 21時) (レス) id: 64abb0ccf3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：睡-ｽｲ- | 作者ホームページ：https://twitter.com/sleep_d_urtk?s=09
作成日時：2019年7月8日 17時
