【REBORN】神様なんて居るはずない

+３０+自分を満たすため ページ33

.



結構ふんばって押しのけたつもりだったけど
トンファーを彼の手から逃れさせるには至らなかった。

でも反動で脇が緩み、胸の前の防御が甘くなる。


その間合いに詰め寄り容赦なく刃を横一線に振りかざす。



しかし、読まれていたのだろうか？



恭弥さんは弾かれた反動とはまた別で自ら少し、ほんの少しだけ
弾いた腕に引っ張られた体を更に後退するように、踵に力を入れて地を蹴った。


だから私の攻撃は浅く、彼の服を切り裂くことしか出来ない。

ご本人にはノーダメージ



『ちっ』



思わず舌打ちをしてしまう

それを聞いた彼は楽しげに、満足気に笑んだ。


彼の満足気な顔を見ると複雑な気持ちになった



「彼を笑ませる程の実力を持てたこと」に対する『満足感・優越感・達成感』

「彼の余裕綽々な笑みを見たこと」に対する『不服・悔しさ・物足りなさ』



愉悦(ゆえつ)と懊悩(おうのう)という対義語同士が心を埋めつくしてく
でもそれは１００％不快ではなく、不快の中に確かに高揚感が残っていた


楽しい

楽しくて仕方がない



この人の為に

この人の近くに存在する為に、この人と並ぶ為に



この人に勝つ為に




いつの間にか心の中に生まれた「自分を満たすための」気持ち


見たくなった

強く気高いこの人に勝った時の世界を




雲「…いいね。」


『…えぇ。でも、まだまだです』



楽しげにするこの人に、いつか冷や汗をかかせたい

でも、それはまだまだ先の話か



攻防を続けているうちに私の方が遅れをとり始める
主に体力面、他にも色々私には足りない部分が多すぎるのだと痛感


追い越すのは、まだまだ先


今日は比較的粘った方だったが
鋼鉄のトンファーに側頭部を殴られ反動で鉄扇を手放してしまった

受身をとって臨戦態勢は解かず、相手を見つめ
弾かれた鉄扇を拾おうと、鉄扇が飛ばされた先を横目に見た


しかしなんとも運悪く、私はまだ動けたが
鉄扇は屋上の柵の下を潜り抜け、拾いにいくのは難しい


武器も持たない私じゃ彼に叶うわけもない



『っ……はぁ。降参です』



両手を挙げて降参と伝える


悔しい、私はまだ動けた。

でも武器(エモノ)が無くちゃ粘れても勝てやしない



認めたくない敗北を無理やり納得させていたら予想外にも追撃が入る

あまりにも唐突で避ける余裕はなかったので素手で受け止めた



『まだ続けるおつもりですか？』


「だってキミの目は死んでない」







思わずため息を漏らした

+３１+暗器の入手方法→←+２９+暇つぶし

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す