27話 ページ28
「………。」
次の日の夕方のこと。名前は、音もなく目を覚ました。真っ白な天井を見つめ、それから辺りを見渡して、上体を起こす。自分に繋がれた管の数々に驚いた。でももっと驚いたのは、自分のベッドにもたれるようにしてベルが寝ていたことだった。
ベルに手を伸ばしかけて、ぴたっと手が止まる。この状況を見る限り、自分が倒れたことは明白だった。
このままベルを起こしてしまえば、きっとまた色々と迷惑をかけるのだろう。それなら、最初からいなかった事にして、誰にも知られぬまま去る方がいいのではないか。そんな良くない考えが、名前の頭の中で渦巻いていた。
自然と伸びていた手が引っ込む。そして、ブチッと点滴の管を無造作に引き抜いて、ベッドを降りた。まだ少しふらついていて、思わず近くにあった物を支えにする。けれど掴んだ点滴のスタンドは不安定で、名前はスタンドごと派手な音を立てて倒れ込んだ。
その音でベルが目を覚ました。
「…なにしてんの？」
開口一番がそれだった。その言葉には少しだけ怒りが込められていて、名前はやってしまった、と思った。ベルがつかつかと名前の方へ寄り、名前を立たせてベッドに座らせる。
「なんで黙って動こうとしたんだよ。」
『申し訳ございません。』
名前はベッド横のテーブルに置いてあったペンと紙でそう伝えるが、ベルは更に怒りを増していた。
「オレが気づかなかったら、そのままヴァリアーから出ていくつもりだったのかよ…。」
ベルは勘がいい。名前はイエスともノーとも言えずに、ただ俯いて縮こまることしか出来なかった。
「…ふざけんなよ。」
聞こえるか聞こえないかくらいの、本当に小さな声。でも耳のいい名前には、聞こえてしまったみたいで、肩をびくりと跳ねらせる。そして、ベルの腕が伸びてきて、叩かれるのを覚悟しぎゅっと強く目を瞑った。
そして、ふわり。名前の予想した衝撃は来なくて、その代わりにベルの暖かさを感じた。ベルは優しく名前を抱きしめていた。
「ここのヤツらは誰も迷惑とか思わねーし、名前はオレの傍にいなきゃダメなの。」
名前の居場所はもうここなんだ、と。これからずっとここに居ていいんだと伝えるように、ベルは割れ物を扱うような優しい手で、名前を抱きしめる。
名前は、その優しさに触れてボロボロと涙を零しながら、遠慮がちに、でもしっかりとベルの背に手を回した。
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夢(プロフ) - Twitterフォローさせていただきました。よろしくお願いいたします。 (2022年6月14日 8時) (
レス) id: 6425fa7392 (このIDを非表示/違反報告)
みっきー(プロフ) - こちらこそ、親切に教えてくださってありがとうございます!! (2022年4月16日 0時) (レス) id: 069036dd65 (このIDを非表示/違反報告)
巫女月 - みっきーさん» わざわざ数ある中から探していただいて、ありがとうございます…！ (2022年4月16日 0時) (レス) @page2 id: 44a9584735 (このIDを非表示/違反報告)
みっきー(プロフ) - 了解致しました！先程フォローさせていただきました！よろしくお願い致します(*´`)♡ (2022年4月14日 14時) (レス) id: 39298dc62b (このIDを非表示/違反報告)
巫女月 - みっきーさん» 作品名も一緒にユーザー名に書いてありますので、かなり分かりやすいかと思います…！ (2022年4月14日 1時) (レス) id: 44a9584735 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：巫女月 | 作成日時：2020年12月23日 2時
