24話 ページ25
『お名前、ありますか?』
《強いてあげるなら、匣の名としてつけられた「ルーポ・ディ・ヌーボラ」だろうが…名前だと思ったことはない。》
ルーポ・ディ・ヌーボラ。雲狼という意味だ。たしかにこれは言わば生態名で、個体の名前ではない。
『明日までに素敵な名前を考えます。』
《主からもらった名前なら、どんなものでも大事にしよう。》
雲狼は大きな尻尾をふぁさふぁさと揺らして答えた。尻尾に灯る紫の炎が美しく弧を描いて煌めく。それから名前は雲狼を匣に戻そうとしたのだが。
「さっき、加減しないで大量に炎を入れただろう?匣兵器は基本、炎が尽きるまで匣に戻らないからね。しばらくはこのままさ。」
炎が尽きかけたら追加で匣に注入すればいい、とは学んだ。それは裏を返せば、炎が尽きるまでは戻らないという意味にもなる。どの道名前はまだ炎量のコントロールが出来ないため、知っていても同じ結果になっただろう。
仕方がないので、外見の匣を持ったまま雲狼を連れて談話室に向かうことになった。足を踏み出したその時、名前の体が一瞬ぐらりと揺れた。ベルとマーモンは先を歩いているため気づいていない。
斜め後ろを付き従うように歩いていた雲狼は、名前の前へ回り込むと、さきほどよりも身を低くしてしゃがんだ。
《自分の背に乗るといい。この男たちの後ろをついて行けばいいのだろう?》
名前は迷ったが、談話室までの短い距離だけ、と決めて雲狼に乗った。ふわふわした毛が心地よく足に当たる。雲狼は極力体が揺れないように気を使いながら進んでくれた。
「名前くらいの身長なら、狼に乗れるんだね。」
しばらくして後ろを振り返ったマーモンが、雲狼に乗る名前を見て淡々と感想を述べた。ベルもその声で後ろを向き、どこぞのジ○リみたいだな、と笑った。
談話室に着く頃にはもう22時を過ぎていた。入隊試験にリングに匣兵器、全て1日の出来事だ。当然夜も更ける。
「あーー、王子はらへり…。」
ベルはグーっと伸びをしながら昨日の夜と同じ席に座った。スクアーロの姿がなかったところを見ると、XANXUSを呼びに行ったのかもしれない。少し離れたところからルッスーリアのご機嫌な鼻歌が聞こえてくる。晩ご飯がもうそろそろ出来上がるのだろう。
そうやって一通り中の様子を見回して、名前は雲狼から降りた。そして、お礼を伝えようとしたところで…意識を手放し倒れ込んだ。
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夢(プロフ) - Twitterフォローさせていただきました。よろしくお願いいたします。 (2022年6月14日 8時) (レス) id: 6425fa7392 (このIDを非表示/違反報告)
みっきー(プロフ) - こちらこそ、親切に教えてくださってありがとうございます!! (2022年4月16日 0時) (レス) id: 069036dd65 (このIDを非表示/違反報告)
巫女月 - みっきーさん» わざわざ数ある中から探していただいて、ありがとうございます…! (2022年4月16日 0時) (レス) @page2 id: 44a9584735 (このIDを非表示/違反報告)
みっきー(プロフ) - 了解致しました!先程フォローさせていただきました!よろしくお願い致します(*´`)♡ (2022年4月14日 14時) (レス) id: 39298dc62b (このIDを非表示/違反報告)
巫女月 - みっきーさん» 作品名も一緒にユーザー名に書いてありますので、かなり分かりやすいかと思います…! (2022年4月14日 1時) (レス) id: 44a9584735 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:巫女月 | 作成日時:2020年12月23日 2時