Vanilla (ページ28)

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｢Aごめん、気づかなかった、俺てっきり田中先輩の事が好きだと思ってて、ごめん、｣

｢慎太郎謝んなくていいよ、ごめんね、私もわからなくて、慎太郎の事が好きなの、だけど、ね、｣

｢え？｣

と口に出したのは樹先輩だった。

私だって、こんな言葉言う筈は無かったのに。

｢過去形なのかもしれないの、好きな人"だった"の。慎太郎、のこと、｣

ちゃんと樹先輩に言おうって決めたのに、いざ言うとなるとどうしても離れたくなくて、樹先輩のことで頭がいっぱいになっちゃって、こうやって慎太郎が目を見てくれてるのもドキドキしなくて、樹に見られた時とか手を取られた時とか樹先輩の匂いでいっぱいになる時とか、、

全部、全部

胸が苦しくなるの。

｢ごめんなさい、…っごめんなさい、、｣

私は2人に謝った。

｢樹先輩にちゃんと言おうって決めたのに、こうやって振り回しちゃって、私、樹先輩の事が好きなんだと思います。私にはまだ早すぎて、分からないけど、全部、全部、頭の中も全部先輩でいっぱいになってるんです。｣

｢だから、慎太郎、ごめん、好きとか言っといて、ごめんね、｣

｢、気づかなくてごめん、ありがとう、｣

そういって立ち去ろうとした慎太郎を

｢お前さ、それで終わる気？自分の気持ち伝えようとかないの？｣

引き止めたのは紛れもなく樹先輩だった。

｢え？｣

慎太郎はそう口にしたけど、次の瞬間、

｢、俺も、Aのこと好きだったよ、ありがとう！｣

と言い走っていってしまった。

｢え？待って、｣

慎太郎を追いかけようとしたけど

それはすぐに出来なくなった。

｢いかないで、｣

樹先輩が私の手を強く握ったから。

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