妹【BANANAFISH】

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これでいい



愛してはいけないなんてのは、最初から分かりきっていた事だった。彼女には帰る場所があって、そこに俺は居ないって事も。

胸を締め付けるこの感情に何と名前を付ければいいんだろうか、何てしみったれた感情の浸る







ぽつぽつと降り始めた雪混じりの雨に打たれながら、もと来た道をゆっくり戻っていく





これでいい、良かったんだ。例えAに嫌われたとしてもこれ以上悲しむことは無い……





きっと俺の事なんて直ぐに忘れるだろう

旅先で偶然話しかけられた男の事なんて



そして幸せな家庭を築いて、暴力も涙も無い笑顔が溢れた日々




写真の真ん中には笑顔のAと優しい旦那、可愛い……子ども




少し、少しだけ願いを聞いてもらえるのなら


遠くからでいい、その幸せを





いや、





やっぱり無理だ





Aの幸せを願う度に









Aの隣で笑っているのは俺がいい


無邪気な笑顔を見せる子どもはAに似て可愛い子がいい




そんな汚い欲が渦巻いて、死んでしまいたくなる




そばに居て欲しい


その真昼のように澄んだ声で名前を呼んで欲しい


花のような笑顔を見せて欲しい







苦しい




どこに居ても何をしていても、Aの事を考えてしまう






辛い





大通りを歩いていてもAを探してしまう


今でも息を切らせながら追いかけてきてくれないか、なんて期待を膨らませるこの胸が




Aに会う度

触れたいと思う

触れられたいと思ってしまう



跳ね上がる胸と手を抑えて



いつ死ぬか分からない世界で、スリルに胸を踊らせていた俺が


Aと出会って、もっとあの笑顔を見たい

もっと声を聞きたい




もっと一緒に生きたい





叶うはずが無いと分かってる









だからこそ願わずにはいられないんだ




どうかAが幸せになりますように(幸せにならないでくれ)

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