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「央魔のヒナは特殊ですが、あなたはその中でも、さらに特殊だ。自我の対立は普通脳内で起きるものだし、あそこまで"影"が血に狂っていることも普通あり得ない。あなたは私のような普通の冥使になるという選択肢は、用意されていないんです。央魔として生きるか、"影"に取り込まれて我を無くすか。そのどちらかだ」
「……そんな……」
「あなたは央魔になるのです」
私の気持ちなどお構いなしに、アーウィンは断定した。
「で、でも……私!!わた、私……吸血鬼なんて……絶対!」
途端に手を離して、冷淡に言い放つ。
「選択肢はないのです。あなたには"影"を制してもらいます。私は央魔でないあなたに興味が無いので」
興味。その言葉に泣きたくなった。
「無理……そんなの無理!だってあのお化けは強いし、怖いし……わ、私は……私じゃできな」
腕を強く捻りあげられて、嘆きは断ち切られる。
「いたい!」
アーウィンは酷薄な笑みを浮かべて、私の顔を覗き込んだ。
「泣いていても、誰も助けてくれませんよ。ここには私とあなたしかいないのだから」
一瞬、彼の顔を見つめる。私とあなたしか?
「お、お母さんは……」
お母さんはどこ?さっきの悲鳴ーー。
「!!」
アーウィンの手を振り解いてベッドを下りると、部屋を飛び出した。
予感は見事的中。
物置へ飛び込むと、地下へのドアがぽっかりと口を開けている。
呆然と立ち尽くす私の後ろから、ゆったりとした足音が近づいてきた。
四角い穴を見つめたまま、叫ぶ。
「アーウィン……お母さんは……お母さんはどこ!?」
「さて……どちらでしょうかね?」
「やっぱりあの悲鳴は!!」
振り返ろうとした私の背中を、彼が強く押した。
短い階段を転げ落ちる。
その背後で扉が閉まった。
「アーウィン!!」
甲高い悲鳴を上げる。
扉に縋り付いて、拳を打ち付けた。
「出して!!アーウィン、出して!!ねえ、お母さんに何したの!!アーウィン!!」
けれど返事はない。
この重いドアの向こうに、あなたはいるのに。
私の声、聞こえているはずなのに!
「答えて!アーウィンーー!!」
予想通り、救いの手を差し述べることはなかった。
冷たい鉄のドアにすがったまま考える。
さっきの悲鳴……あれは夢の中で聞いたもの?
それとも現実の世界で聞いたもの?
本当にお母さんの悲鳴だった?
分からない。嫌な予感がする。
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作者名:蒼(そう) | 作成日時:2023年12月29日 0時