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「う……」


朦朧としたまま、私は腕の力を頼りに上半身を起こした。

固い床に押し付けられていたほっぺが少し痛い。

気を失っていた……どれくらい?



顔を上げると、目の前にはドロドロとした肉の塊があった。

それはゆっくりと溶け出し、茶色の汗がじんわりと染み出していく。

血と……濃密な土の臭い。

それが何なのかはよくわからないのに、不思議と肌馴染みのいい匂いがした。



薄れていく懐かしい気配を惜しんで、思い切り空気を吸い込む。

何だか息がしづらいことに気づいた。

喉に手を当てると、ヌルヌルした血の感触。

肉の裂けているのを指先で感じる。

そうか、それで息がしづらいんだ。


痛みを感じたが、それ以上に寒気の方がひどい。

力が入らない。

変な汗がこめかみを伝う。


貧血を起こしているみたい。

寒くて頭がぐるぐるする……。

でも……立たなきゃ。


顔を上げた。祭壇に眠るお母さんが見える。


「おかあさ……」


立ち上がろうとして、バランスを崩した。


「!」


倒れそうになった私を支えたのは。


「…………」
「アーウィン……」


アーウィンが私の腕を掴んでいる。

ふっと肩から力が抜けた。


ヒトでもヒトでなくても、私の側にずっとあった顔……。

ふらつく私をきちんと立たせる。

大丈夫。私は立てる。


「アーウィン、良かった。お母さん、無事だったの……」


裂けた喉元から血と息が漏れる。

はっきりしない声になってしまった。



アーウィンはそれでも微笑んだ。

嬉しい。いつもの笑顔だ。

ちょっと皮肉っぽくて、でも穏やかな微笑み。

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作品ジャンル:ホラー, オリジナル作品
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作者名:蒼(そう) | 作成日時:2023年12月29日 0時

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