have a good dream -あげいん ページ8
おはよって、あと何回言えるか。おやすみって、あと何回言えるか。
好きだよって言えるまで、あと何日猶予があるか。
小さい頃からずっと、Aと遊んでいると、楽しい気持ちと、その、ほのかに悲しい気持ちがごちゃごちゃに混ざって、どうにかしなきゃ、と頭をぶんぶん振った頃には、もうまたねの時間だった。
小さい頃は、それがどうも飲み込めなくて、時間なんて気にしないでよければ、なんて何度もぼやいた。
「今日は、大丈夫そう?」
「……うん、今のところはなんとか」
そっか、なんて返して勝手に安心する。一番辛くて、苦しいのは俺じゃなくて、Aなのに。
「そろそろ、面会時間終わっちゃうよ」
かえらなきゃ、と繋げるAの声が少し震えている気がして、なおさら帰るのが嫌になる。ごめんね、子供の頃から変わらないままで。
ごちゃごちゃのバッグから出した、花火の描かれた包みのブラックチョコレート。もし食べられたらだけど、なんて感じの悪い言葉を吐いて、渡して、コートを着て、マフラーを巻く。
この冬の暗くて澄んだ空に、星じゃなくて花火が咲いたら、風情はないだろうけど、きっと楽しい。
Aが好きだって言ってくれた、歌ってみた。八月のレイニーなんて、季節外れにも程があるけど、そうなってしまったら悲しくて歌えないだろうけど、今日も、きみの生きる糧になるように、歌う。
「……言えなかったな」
何度もチャンスを逃したその言葉は、本当に伝えたい人には伝えられない。だから、歌にのせて、きみへの愛を歌うよ。
おやすみ、いい夢を。
oh, my goodness -S!N→←a spoon of love -まふまふ
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作者名:硝子体 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/glass_urtk
作成日時:2019年2月2日 9時