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浅紅のベーゼ / 茅ヶ崎至 ページ7

。◇






今までの人生において、言い方は悪いのかもしれないが女性に困ったことはなかった。



ふぅ、と珈琲を飲み干した唇から吐息をもらしながら、至はそんなことを考えていた。

確かにこの言い方は誤解を招くかもしれない。誰に、なんてことは自分でも分からないが、なんとなく弁解しおきたい気分なのだ。
その実、小学校に上がったくらいから、察するようになった。自分に対する女子の視線。それが僅かながら熱を帯びていること。中学校に上がっても、高校に上がっても変わらない女子からの桜色の視線に、そろそろ飽きてきたところだけど。


そんな人生を歩んできたせいか、どうしても女性に対する恋愛感情というものを抱いたことがなかった。かといって同性に恋をする、なんて趣味は持っていない。ただ、世間が永遠の憧れとする恋愛というものをしてこなかっただけだ。だけれど、それはそれでそれなりに幸せだった。別に彼女がいなくたって何も困ることなんてないだから。だって自分にはゲームという異世界がある。こんな自分をいつでもどこでも受け入れてくれる、そんな理想的な彼女のような世界が、スマホを開けばあるのだから。





「 またそんなこと言ってるんすか 」

「 実質スマホって会いたい時に会えるし話したい時に話せるし、そのうえ攻略法を教えてくれる。まさに理想完璧な彼女でしょ 」

「 そういう話題口にするってことは、本当は恋したいってことなんじゃないっすか 」





いつかそんなことを言われたことがあった。
相手は誰だっただろう。話している時にどんな顔をしていただろう。覚えているのは、ただその言葉だけだ。

最初は何をほざいているんだ、と思った。それから、そうなのかもしれない、と思った。
自分の中に自分が二人いる、とはよく言ったものだ。本当にそうなのかもしれないと思えるほど、自分の心の中がごちゃごちゃと談義を続けるのも、目の前のこいつには分かっているのだろう。



何はともあれ、自分はずっと、

恋もいうものを追いかけてきたんだと思う。

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作者名:Chocolate palette.製作委員会 x他4人 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年2月14日 21時

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