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そうだ。
どうして考えてなかったんだろう。
今年に入ってからの彼は、人気者だった。
なぜなら――――彼が劇団に入ったから。

MANKAIカンパニーという劇団に入ったという彼は、あの皇天馬や3年の兵頭先輩と仲が良くなったりして自然と注目を集めるようになり、元々性格もいいからファンのような女子が増えていた。

私達の距離感が変わったわけじゃない。でも、“七尾太一”に対する周りの見方は変わっていた。
だから、当然といえば当然なんだ。
ファンから好きな人に変わるなんて、よくある話で――――

「俺っち、こんなにチョコ貰ったの初めてっスー!!」

――――それってつまり、
――――私はもう必要ないってことで。

「モテてるじゃん、七尾」
「こ、これがモテ!?」
「それとか多分、“本命”じゃない?」
「ほ、本命!?そそそそんな!!」

義理チョコ同盟、なんて。
本命を貰える彼に、そんなものはもういらなくて。

恥ずかしかった。
何も考えずに、はしゃいでいたのは自分だった。
その関係を利用していたのは私の方だった。
それに気づかない自分が馬鹿らしかった。

どうせなら、
「本命」って言えない関係なんて作るんじゃなかった。

「義理チョコ同盟、もういらないね」
「え?」
「本命チョコを貰えるほどモテるんだから、私のはなくて大丈夫じゃん」
「Aちゃん…?」
「ていうか初めから、」

醜いな、自分。
彼に悪いところなんてない。
悪いのは私。
こんなのは八つ当たりだ。
拗ねてるだけだ。

ただ、その顔が見たかった。
でも、他の誰かじゃなくて、私が、

「私じゃなくてもよかったんだよね」

私だけが――――見たかったんだよ。

「何言ってんの?」

掴まれた頬。
無理やり上げられた顔。
交わした視線。
滲んだ景色の向こう。
知らない、彼。

「俺はチョコを貰って嬉しいけど、
欲しいと思ったのは、楽しみにしてたのは――――Aのチョコだけだっての!!」

真っ赤な顔と、真っ赤な髪。

「義理チョコ同盟なんていって、それがAの優しさを利用してるって分かってても、
そうまでして欲しかったのはAだけだから!
……わかれよ、それくらい」

荒い口調も、骨ばった手の感触と
多分、私しか見たことない彼の顔。

「――――でも、同盟は破棄」

だって、用意したチョコレート味のマカロンは
“義理チョコ”じゃないんだから。

オトナとコドモ / 古市左京→←義理チョコ同盟 / 七尾太一



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作者名:Chocolate palette.製作委員会 x他4人 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年2月14日 21時

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