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「俺がどうしたって?」
「おみくん!?」
「おはよう」
にこりと爽やかに笑って、いつもならキュンとするはずの顔が今は少しだけ憎らしい。タイミング悪すぎ。今日は休講になったと言っていたのに、普通の時間に起きてきやがった。
つい先程まで2人に向かってピーピー騒ぎ立てていた口は、左京さんの機嫌が悪い時みたいにシュンと閉ざされる。金色の瞳がキュンと胸を、今回に至っては喉を締め付けるのだ。
「えっと、あ、えっと…」
何か言って退散した2人にも気づかないくらいに心音がうるさい。突然口ごもった私に、臣くんは怪訝そうに首を傾げた。
別にいつもいつも、こんなに挙動不審をキメている訳では無い。ただ気持ちを隠すだけではなくて言い訳を考えなければいけない此度は大幅なキャパオーバーなのだ。
「あ、そういえばチョコ美味かった。ありがとな」
言いづらい事だと察したのか、パッと臣くんは話題を変えようとしてくれた。こういう気の利くところも大好きなのだけれど、残念ながら話題が変わっていない。
「あ、うん、よかった」
「太一が俺もハートがいいって騒がしくてなぁ。もし余ってたら太一にあげてやってくれ」
「あーごめん、ハートは1個しか作ってなくて」
「…1個?」
「あ」
あまりにも無意識に飛び出た爆弾発言。これじゃあ特別だって、臣くんが好きだって言っているようなものではないか。
違う、ううん、違くはないけど、とりあえず訂正しないと。
臣くんは無表情で私をまじまじと見つめる。純粋に疑問に思っただけなのか、全てを察してしまったのか。実はひとつだけ当たりが入ってるんです、と今思いついた言い訳も、刺すような金色に射抜かれた私はすぐ口に出すことが出来なかった。
あぁ本当に、私はこの瞳に弱いなぁ。嘘がつけなくなってしまう。
何か考え込むように顎に手を添えた彼を、私はどうすることも出来ずにただ見つめた。彼の次の言葉を待った。バレていませんようにと、その言葉に賭けた。
「それは…自惚れてもいいんだよな?」
「うぬ……なんて?」
予想外の発言、しかしこの男天然タラシにつき注意。落ち着け私。期待させるようなことを言ってくるのは普段からだろう、そう自分を戒めて彼を見上げた。
「両思いだって期待してもいいんだよな?」
「……え?」
にこり、微笑んだ金色に囚われた。
義理チョコ同盟 / 七尾太一→←言い訳なんて甘かった / 伏見臣
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作者名:Chocolate palette.製作委員会 x他4人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2018年2月14日 21時