2月14日の過ごし方２ (ページ1)

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元同級生（千賀健永）ページ1

街はバレンタイン一色。

赤とピンクの看板、タペストリー、POPが街を彩る。

そしてケーキ屋さんも、カフェも期間限定、バレンタイン限定ってチョコレートメニューを推し出す。

私が働いているこのレストランも例外ではない。

カジュアルな小洒落たレストランで、家族、友人、恋人、どんな関係の人とでも来れる雰囲気のお店。

パティシエさんがチョコレートメニューを試作し始めた頃から毎日甘―い匂いが店中に充満している。

もちろん、換気もしているから嫌な気分にはならない程度だけど…。

何日もかけて試作していたチョコレートメニューの売れ行きは絶好調だ。

私は毎日、来る日も来る日もチョコレートメニューを運んでいる。

やはり人間と言うのは限定と言う言葉に弱いらしい。

カランカランとドアベルが鳴り、お客様の来店を知らせる。

男性二名。

「いらっしゃいませ。」

笑顔で挨拶をしてお席に案内する。
その後すぐにおしぼりとお冷を準備してお出しする。

「ご注文がお決まりになりましたらそちらのボタンでお呼びください。」

そう言って一度離れる。

いつも通りの仕事。

ただ、片方の一人がずーっと私の顔を見ていたような気がして、それがすごく気になった。

ボタンが押され、ピンポーンと音が響く。

気になることも気にしないようにしながら注文を聞く。

？「あのー、もしかしてAちゃん？」

注文を繰り返した後、そう言われて驚く。

「え…と、はい。」

？「え！やっぱりAちゃんだった！俺のこと覚えてる？小4まで同じクラスだった千賀健永！！」

「え…。」

小4まで…と言うことは私が引っ越す前まで。
必死に記憶を手繰り寄せる。

「あ、え？千ちゃん？」

ｓ「そうそう！！覚えててくれたんだ！！」

千ちゃん、と言葉に出した途端、一気に記憶が蘇った。

引っ込み思案だった私と凄く仲良くしてくれた男の子。
奇跡的に1年生から4年生まで同じクラスで、6年まで一緒だったらいいねと笑い合ったことも思い出した。

私が親の転勤で引っ越すことになり、6年まで、というのは叶わなかった。

千ちゃんと離れ離れになってしまって、しばらくふさぎ込んでいたくらいだったのに、なぜ今まで思い出さなかったのかが不思議なくらいだ。

目の前の千ちゃんは小4の時から変わらない優しくてきれいな笑顔で笑っている。

私はあの頃とは少し変わってしまったから、会わない方が良かったかもしれない。