# 30日目_�� ページ12
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見たこともない風景が、寝不足と疲労感で何も考えられなかった頭を急速に覚ましていく。
『やっちゃったな…、』
どこに向かっているのか、そもそも今どこにいるのかすらわからないバスの中でぽつりと呟いても、車内にいるのはうとうととを船を漕ぐおばあちゃんが近くにいるだけ。
日が落ちかけているのをぼんやりと見つめていると、視線の先にこじんまりとした花屋さんが見えた。
__気がつくと私は、バスの降車ボタンを押して次の停車場に降り立っていた。
真っ直ぐ足が向かう先は、勿論先程見た花屋。道中で微かに…いやかなり濃い潮の匂いが乗った風が流れてきて、自分がどれだけ遠くに来てしまったのかを改めて痛感した。
お店の前に立つと、淡い光に照らされた鮮やかな花が私を迎え入れるように花びらを開いていた。
__そういえば、去年の誕生日は柄にも無くうっしーとキヨから花束と花瓶を貰ったんだっけ。あの時は本当に嬉しくて、毎日お花飾るね！なんて言ってたくせに、最近はとにかく時間がなくて、花を生けることすら出来ていなかった。
ああ、そっか。そんなに余裕がなかったんだな、私は。
どんどん大きくなる罪悪感を抱えて俯いていると、ふと店の入り口に飾ってある明るい山吹色の花に目が止まった。ランプのように膨らんだ花弁が愛らしく、下に刺してあるプレートには"サンダーソニア"という名前が書いてある。
初めて見たその花になんとなく心惹かれた私は、迷うことなく店員さんの元に向かうと花束を作ってもらうようにお願いした。
その時初めて、自分のスマホが鞄に入っていないことに気がついた。…やばい、キヨの家に忘れてきたのかも。そこでようやく自分の今の行動の怖さを理解して、急いでお会計を済ます。
外に出ると、空がもう薄く紺色に染まっていて、目の前のバス停も夜に沈みかけていた。焦って時刻表を見ると、2分後にくる便がひとつ。それが一時間に一本しか来ないものだと知って、また自分がどれだけ遠いところに来たのかを理解した。
…今頃みんなは、どうしているだろうか。勝手に飛び出した私のことなんてほったらかして、いつも通り動画を撮ってるのかな。
__みんな、怒ってるかな。
自業自得で気が重い私は、複雑な感情と黄色い花束を胸に抱いて、小さなバスに乗り込んだ。
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sssato310(プロフ) - コメント失礼します。このお話すごく好きで堪らなくて8回くらい読み返してます。もう更新されないのでしょうか、、、アピスさんの作品とても好きなので更新されるの楽しみにしています！ (2022年4月2日 0時) (
レス) id: 5031cdb017 (このIDを非表示/違反報告)
かけたま - コメント失礼します。いや、面白すぎて凄いです。ごめんなさい語彙力無くて。^_^でもすっごい感情とか、情景が伝わってきて毎回楽しいです…。これからも楽しみにしてますねしてますね！！！！ (2021年10月21日 21時) (レス) @page17 id: a9aad67263 (このIDを非表示/違反報告)
アピス(プロフ) - ゆのまるさん» ゆのまる様、コメントありがとうございます。勿体無いお言葉まで頂いて、本当に嬉しいです。これからもゆっくり更新となりますが、何卒宜しくお願い申し上げます。 (2021年6月10日 16時) (レス) id: 7d62638449 (このIDを非表示/違反報告)
ゆのまる(プロフ) - はじめまして、コメント失礼致します…！作者様の言葉の選び方が本当に素敵で読む度、お話に惹き込まれてます(; ;)そして、更新ありがとうございます！今後の展開がとても気になるので、無理せず頑張ってください…！応援してます！ (2021年6月10日 0時) (レス) id: 587b75f302 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アピス | 作成日時：2021年5月14日 3時
