器用貧乏として採用されました-2【Vtuber】

●昔話● ページ43

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気が滅入るほど遠い過去の、別世界の話である。



ラグーザ家の三男として訪れた晩餐会＿＿という名の上流貴族見定め集会に嫌々参加させられた時の事。

“人ならざる者”に笑顔や愛想を振りまき、時にはレディファーストを交え、そこそこの会話で好感度をかっさらっていくイベントは、それはそれは体力や気力が削られるものであったと記憶している。


今にも話しかけてきそうな夫人を横目で眺めながら、傍にいた者に｢涼んでくる。人を寄せ付けるな」とだけ吐き出してから逃げるような足取りで静かなベランダに赴いた。

手すりに背を預け首をぐわんと上に向ければ、社交界とは真逆な程に輝いた星々が目に入ってきた。はぁ、とため息を漏らしたと同時に、たった数時間で溜まった鬱憤が口から流れていく。



｢ッあ"〜〜……ダル……愛想って…いんのかなホントに。マジで俺に近づいてくんな……頼むから……」


｢ぶふっ」


｢ェ」


｢あっ、いや、……ｽﾐﾏｾﾝ……」




＿＿＿＿＿聞かれた。聞かれてしまった。

手すりから身体を離すのが先だったろうか、今の言葉を撤回するのが先だったろうか。太い柱の向こう側にいる女性が手を上げて｢見ないでください」と制したのが先だったろうか。

兎にも角にも、女性から見るなと言われてまで無理やりに顔を拝める精神は自分には無かった。






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