Every day words to give to Sunrise(Ryohei.A) (ページ50)

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Every day words to give to Sunrise(Ryohei.A)５０ページ50

「なんか、ありがとう。」
「何でお礼？」
「そんなに、私のこと引きずってくれると
　思わなかったから。」
「何それ。」

阿部を見下ろすAの目に残っていた涙が
一粒落ちる。
ああ、その涙を拭ってあげたいな、なんて。

「何だろうね。もっと、ドライに終わるかなって
　思ってたから。」
「そう、だね。
　俺も自分がこんな勢いで色々やらかすとは
　思ってなかったし。
　Aさんが、ここまでやるとも思ってなかった。」
「私のはたまたまよ。
　たまたま大阪行きの話が出て
　あー、良いタイミングだなって思って乗っかっただけ。」
「俺にとっては、最悪のタイミングだったけど。」
「ふふ。それは、どうかな。」
「笑うところじゃないよ。
　本気でびっくりしたんだから。」

やっぱり好きだな。

交差させた腕に頬を当てて
見上げた先にあるAの穏やかな顔に
じんわりとそう思う。

さっきまでの苦しさが嘘のような
この穏やかで温かな気持ちは久しく感じたものだった。
できればずっと、この気持ちを抱いて
Aの穏やかな顔を見ていたい。
見ていたかったが、その為にはやる事がある。

「Aさん。」
「んー？」
「俺、やっぱり、Aさんのこと好き。」
「…わたしは」
「だからまた会いに来るね。」

Aの言葉を遮るように、言い切った阿部の言葉に
Aの顔が少し悲しげに歪んだ。

「…そんな時間あったら休んで。忙しいでしょ。」
「忙しいけど、Aさんに会えない方がしんどい。」
「馬鹿なこと言わないで。」
「大真面目だから。
　まあ、俺も今回気付いたことだけど。
　恋人に会って元気を充電するって本当みたいで。」

努めて明るい声を出してみても
晴れることのないAの表情に
うまくいかないな、と1人心中でごちてみる。

「スマホの置くだけの充電器みたいな感じでさ、
　Aさんの傍に居たら
　俺は勝手に充電されてたみたい。」
「…何それ。」
「んー、良い例えだと思ったんだけど。
　Aさんが何もしなくても
　Aさんと何もしなくても、傍にいるだけで
　俺は充電してもらってたんだなーって
　この3ヶ月で気付いた。」

Aの瞳にうっすらと、また涙の膜が張っていく。
思わず伸ばしそうになる手で
阿部は自分の腕を握り、堪える。